感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
294
トリックを知っていたので読まないままだった。そろそろいいかと、手にとって読み始めると、事件に関係ない部分がとても楽しく、古い海外翻訳にしてはスルスルと進んだ。密室トリック自体は、それこそ子供の考える手品レベル。目張りされた密室というアイデアは面白く画期的でもあるが、自殺者はいちいちこんなことしないだろうという現実を、土台から無視しているのは厳しい。二人のマジシャンのラブコメや、H・Mの繰り広げる、動物相手のドタバタこそが真骨頂。一点、犯人指摘のためのロジックはカーの作品の中でも冴えている方だと思う。2021/04/16
hit4papa
57
カーター・ディクスンのシリーズキャラクター ヘンリー・メリヴェル卿ものの、第15作目にあたる本格ミステリです。目張り密室トリックに加え、ロミオとジュリエット的なロマンスが彩を添えます。密室の作り方は、真相が分かってしまえば何て事はありません。だからこそ、余計、種明かしまで気付けないのが悔しいのです。本格ものは、その時代の背景や道具立てで、如何様にも謎を構築できるのだと認識しました。本作品では、戦時という制約すらも、トリックに一役買っています。怪しい登場人物たちへのミスリードも効いています。2020/01/11
kagetrasama-aoi(葵・橘)
46
カーター・ディクスン、登録三十八作目。ヘンリー・メリヴェール卿の長編、十五作目。第二次世界大戦時下のロンドンの爬虫類館が舞台。密室殺人のトリックは戦争中ならではのもの。灯火管制による暗さ、飛行機の爆撃音、爬虫類館の雰囲気がディクスンの世界を盛り上げてます。敵対する奇術師ニ家の其々の跡取り(男女二人)のロマンス譚、爬虫類に纏わるH・Mのドタバタ劇、最後の謎解きはH・Mの独壇場。H・Mの個人的勧善懲悪が面白過ぎます(笑)。カーター・ディクスンの作品の中でもお気に入りの一冊です。2023/05/14
koma-inu
34
4点 館シリーズのような題名ですが、カーの作品です^^;ドアや窓に目張りが施された密室から、いかに犯人が抜け出したか?トリック自体は、子供の頃クイズで見た記憶ありましたが、ロンドンの◯◯をトリックに加えた事が見事であり、シンプルだけど印象的です。探偵役のメリヴェル卿が、犯人に自白を迫りますが、題名ともコラボした例を見ない方法で記憶に残りそうです。2021/05/23
Aminadab
25
カー長編23冊目で松田道弘お薦め6冊目(1944)。これは中期の佳作。初期よりずっと読者フレンドリー。事件発生前に長いプロローグが置かれて被害者の生前が描写され、現場検証や証人尋問は極力短くされている。スラップスティック場面はいつもだが、それに加えてホラーに近いサスペンス場面があるのが中期サービス。あと、事件発生が1940年9月6日、つまり組織的ロンドン爆撃が始まる前日に設定され、戦時下の生活の様々な要素が、単なる背景でなくミステリの本筋に織りこまれているのがお見事。訳は古いが十分読める。もちろんお薦め。2022/03/16