内容説明
倫敦のさる家に72歳のラリーは間借りしている。今は独り身だったが、ある日店子として一人の娘が越してくる。紹介された彼は、ふと、この家が変わりそうな予感をおぼえる―“いいかね、ラリーは決して舞い上がりやすいたちではない。なのにどうだ、私ときたら震えているじゃないか”。他人の目をとおして世界を見る、この異様な感慨。怖くて滑稽で哀しい、瞠目のデビュー長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Emi
30
怖い。そしてとにかく気持ち悪い。72歳の独居老人ラリー。階下に越してきた若い女性マンディへの偏愛が彼独自の目線で延々と語られる。ストーカーってこんな感じで全てを歪めて自分に都合よく改変するのかもな、と思わせる気持ち悪さ。彼女を真に理解してるのは私だけ。彼女の役に立つべく尽くしてるのだからそれに応えないなんてありえない!マンディラブっていう呼び方がもう気持ち悪い。誰かラリーに「気持ち悪いねん!」って言ってやってくれ!とずっと思いながら読みました。2024/09/14
musis
8
「笑ってしまうほど哀しい」「このお年寄りは、あなたの隣人ですか あなた自身ですか」と書かれた帯が素晴らしいと思った。とにかく自尊心が強く自分を正当化しまくっているラリー。思考回路が歪みすぎて哀れに思えるが、…いる、こういう思考の人。そして自分の都合のよいように解釈し、親切(と思い込んでいること)の押し売りをしようとしている自分は全くいないと言えるだろうか。とてもおもしろかった。この作家の他作品も読みたい。2022/02/05
きりぱい
7
うあああ、気持ち悪い。他人の行動を非常識に思うのに、自分の異常な行動はへ理屈で通ってしまうラリー。72歳の彼が目につけたのは新しく入った下宿人のマンディ。この娘のことは私だけがわかってあげられると親切を押し売り。恩着せがましく、お返しがないとイジワルになるところが何とも。結局のところアマンダはどう思っていたのか、ラリー目線しかないから滑稽といえば滑稽だけれど、うざったさもトホホを越えるとサイコスリラーかホラー。途中で予想のついたオチにならないことを望んだけれど・・。2013/04/17
ぷっぷくぴー
5
72歳でこんなに頑張れるなんて、ラリーめげるな!と最後は応援したくなるかも。でも、それは小説の中に限るのですが…。現実ならば悍ましいの一言。2023/04/06
犬都歩
5
ひたすらに気持ち悪くておぞましい話。老人ラリーが間借りしている家に、新しくアマンダという若い女性が越してきたところから物語は始まり、ラリーは早々にアマンダに執着する。思い込みと欺瞞と傲慢さと虚栄心と弁解がましさと偏執狂的なところを存分に織り交ぜながら、毎日アマンダの部屋を漁り、手料理やプレゼントを押し付け、何度寝返りを打ったか聞き耳を立てる……。もう本当に、心底気持ち悪いの一言に尽きます。ヘドロを延々と胃袋にねじこまれているような気分になるので、もうちょっと短くても良かったかな。とにかく気が滅入りました。2022/12/10