感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
97
ブレンドン刑事は殺害現場近くの荒地で遇ったリンドウ色の目をした美女に惹かれつつ、失踪したレドメイン家の末弟を追う。ダートムアの荒野からコモ湖畔へと出没し続ける赤毛の男。彼はレドメイン家の殺人とどう関わるのか。そして不器用なブレンドンの恋の行方はどうなるか。野や森に突然姿を現す赤毛の男は異人や妖精のような神秘性を漂わせている。しかし彼は戦争で心に傷を負った兵士であり、殺人犯という現実の暗い影を背負っているのだ。こうした不気味さと物悲しさは、やはり戦争直後の離島や山村を舞台とした横溝正史の作品に通じると思う。2019/01/31
みっぴー
50
乱歩が『万華鏡』と例えた作品。字が小さい、行間が狭い、会話が長い、風景描写がくどい、ひたすら読みにくい、、、(*_*)赤毛の美女、ジェニーレドメインの夫がジェニーの叔父に殺され、休暇中の敏腕刑事マークが解決に乗り出すが、被害者も加害者も姿をくらます。確かに乱歩や横溝が好きそうなトリックですが、犯人の動機を延々聞かされる部分は忍耐力が限界にきていました。そして極めつけの形見の品。誰得、、、?いまいちのめり込めず読了(-_-;)2018/07/04
星落秋風五丈原
40
「伯父達が一人一人殺されて遺産を受け取るのがただ一人」といえば、ミステリファンなら絶対疑う!という人物がマーク視点だと一向に怪しまれないのでイライラ。江戸川乱歩が「万華鏡のようだ」と絶賛したストーリー上のある仕掛けも今では一般的に使われている手法。そういえば、美女を巡って次々と周囲の者が殺される『女王蜂』やきょうだいが殺される『獄門島』などの横溝作品も根っこはこの作品にあったりして。作中で苦しい苦しいツッコミを入れつつミステリの王道を開いてくれた本作に、よくぞ生まれてくれました!と感謝する気持ちも。2015/10/03
みつ
34
ミステリの古典的名作を多分40数年ぶりに再読。ハヤカワ文庫の「ミステリ・ハンドブック」(1991年)によれば、読者アンケートで「黄金時代まで(〜1939年)」の海外長編部門で第4位に入っている(「Xの悲劇」「樽」「アクロイド殺し」を僅差で上回る。)。事件は次々に起こるが(ただし殺人事件かどうかすら明らかにならないまま)全体におっとりとした色合いで物語は進む。小さな文字でびっしり印刷されているのも今昔の感があるが、古風な訳文はこなれていて思ったより読みやすい。謎解きよりも恋愛絡みの物語を堪能できる一冊。2021/05/15
Tetchy
33
かの江戸川乱歩が『Yの悲劇』、『ナイン・テイラーズ』と並んで名作10傑として選んだだけに評価が先行している感は否めない。彼自身、これを翻案にして『緑衣の鬼』を書いているくらいだからよほど気に入ったのだろう。 2008/10/19
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