内容説明
私はジョージ・サリッジ。仕事はともかく家庭に満足しているとは言えない。だから博打に入れあげることにもなった。運命の女性ナンシーに逢った今や、二重生活を支える資金も必要だ。だから“叔母の遺産で万事解決”の皮算用が吹っ飛んだ衝撃といったらなかった。あげく悪事のお先棒を担がされ、心沈む日々。しかも、事故とされた一件をフレンチという男が掻き回している…。
著者等紹介
霜島義明[シモジマヨシアキ]
1958年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kircheis
99
★★★★☆ 序盤は『クロイドン発12時30分』と同様の展開だが、叙述者(犯人)が主犯ではない点が面白い。 そのため、前半で倒叙のスタイルをとりながら、後半で謎解き(ハウダニット)に移行できているのだ。 このスタイルはクロフツが初めてではないだろうか。 犯人のジョージは基本的には善良で、欠点は多々あれど悪人ではなかった。それが完全に巻き込み事故のような形で犯罪に手を貸してしまったのであり、同情の余地が大きかったのもポイント。 最後は強引にまとめた感があるが、一応大円団なのかな(^^;)2019/12/05
Ribes triste
13
今回は倒叙ミステリーの体裁。うまいなあ、そして面白い。クロフツの描く犯人は決して凶悪ではなく、その心情が実に人間的なのがいいのです。もっとシリーズを読みたいのですが、入手困難なのが残念。2018/05/17
ホームズ
12
最後の未訳作品。久々に読んだフレンチ警部シリーズ。なんだか今までよりも読みやすくって良かった(笑)前半は倒叙ミステリって面白いな~って感じで良かった(笑)まあ今回は主犯じゃないしあんまり犯人を応援できなかったけど(笑)後半からは相変わらず徐々に真相に迫っていくフレンチ主席警部の姿が良いですね(笑)『クロイドン発12時30分』が読みたくなったな~(笑)2010/06/09
rara
7
ちょっとした浮気から思いがけずに悪事に手をそめる事になった動物園園長さんがお気の毒で…。一緒にはらはらしながら読み進めました。作者は宗教的な家庭で育ったとありましたが、淡々とした文章と結末にその影響を感じられました。2020/11/09
旅猫
7
一度は抑えた殺意が、違った形で実行へ移される。共犯者の視点からの倒叙ミステリ。蛇を捕まえるため暗闇で待つジョージの心理と、ラストでの穏やかな様と対比が興味深い。ジョージしかりナンシーしかりキャッパーしかり。みな誘惑に負けた普通の人たち。だからといって罪を犯してよいものではないけれど、弱い部分には共感と行かないまでも分かる部分はある。・・・のは私が弱い人間だからか。2010/10/01