感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
259
タイトルが皮肉なくらいに竜頭蛇尾な一作。昔、ヴァン・ダインを読もうと思った時に、あらすじを見て最も興味を引かれた作品であり、非常に魅力的な人間消失事件。読み手としては当然"消失"の部分に興味の大半を注ぐので肩すかし感がすごい。いっそ、バカミストリックで無茶してくれれば傑作になったかも。そもそも、当時の自宅プールの規模感が現代人の感覚とかけ離れ過ぎていたり、竜の足跡の件も、アレがそんな風になるとはとても思えなかったりで、真剣に読んでも推理は無理。あと、死体発見までが長すぎる。事件自体は魅力的なだけに残念。2016/11/17
LUNE MER
24
棲息すると伝わる竜に襲われたとしか思えない傷痕、足跡等の竜の痕跡…と盛り上げた上での真相のズッコケぶりは島田荘司っぽさも感じてむしろ好き。ヴァン・ダイン全12作を読んだ上で好きな順に並べた場合、必ずしも前半6作が常に上位にくるとは限らず、僕自身の場合もある程度前後したランキングになるのだが、刊行順に読み進めた場合にケンネルからこのドラゴンに進んだ時点で陰りを感じたとしても不思議ではない。ヴァンスの推理もなんか雑。とは言え、ガチガチにロジックの隙がないくらい固められた国名シリーズよりも読み心地が良い。2022/05/17
本木英朗
18
ヴァン・ダイン7作目の長編である。俺は高校・大学・社会人と今までに3回読んだ。これは4回目である。しかし最初は『ガーデン殺人事件』と間違っていたようだが、途中で「あ、これは違う」と気が付いた。というわけで、こっちがあとはネタバレに気づいていたのである。まあ、最後まで一緒に読んだねけど、やはりなあ。まあこのあたりからヴァン・ダインはダメになっていくのだりうね。だからこそ『ガーデン』はいいんだけど、それはあっちでやろう。ではでは、この辺で。2019/07/13
歩月るな
11
「それから、きみは、藤太がどうやって毒矢でもって、巨大な百足を殺し、琵琶湖の竜の眷属を救ったか知っているだろう」「いや、知らないね」マーカムはぶっちょうづらをしていった。(頁247)至極当たり前の単純な事件なので物語自体を楽しめなければ意味がない。むしろヴァンス七作目以降の前評判と言ったら……。事件冒頭八月十一日午後十一時四十五分から十三日午後十時までの物語。とんでもない時間から事件に担ぎ出されている点に注目。こんな時間から午前三時前まで捜査をすると言うのはあまり見ない。まあ不眠不休の刑事とかもいるけど。2018/02/17
瀬名
9
ファイロ・ヴァンスシリーズ第7作目。 今回は、養魚家の家の屋内プールに飛び込んだ青年がそのまま忽然と姿を消し、代わりに、水底に巨竜と思われる足跡が残されていた不可解な事件にヴァンスが挑む。 犯人は極めて解りやすい。トリックも今では当たり前だが、当時はきっと斬新的だったのだろう。 憎み合っている人々が何故集まってパーティーをしているのだろう?と思ったが、ちゃんと納得出来る理由があった。 今回もヴァンスの蘊蓄ぶりは見事。2016/10/15