感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
247
何故か割りと好き。『僧正~』までが尻上がりであったがために、余計に肩透かし感が強くなってしまう可哀想な作品。良く言えばミスディレクションを上手く活用、悪く言えば茶番劇。ヴァン・ダイン銘柄としてはライトに過ぎる。島田荘司氏の最新作『屋上の道化たち』がまさにそういう作品で既視感。この時代の本格は、心理的証拠重視が一つのトレンドでもあるが、ヴァンスの推理方法と事件の畳み方に、そのトレンドの限界が見えている。犯人を看破する嗅覚と、犯行を証明する能力の解離がここまでひどいと、探偵と犯罪者は紙一重どころか渾然一体。2016/10/21
LUNE MER
22
警察の思うように容疑者を逮捕させておけばよいものを名探偵がしゃしゃり出て来たせいでかえって犠牲者が増える、というのも古典的本格ミステリーの王道展開のひとつではあるが、本作ではヴァンスが正しくしゃしゃり出てくれたお陰で最悪の事態を防げたドラマを描く。再読だと犯人の言動が余りにも滑稽で、それもある意味で読みどころのひとつ。ラストの展開も、もうヴァンスシリーズはこの流れで行くのね、と暗黙の了解をついついしてしまう感じ。新訳は当面おあずけな感じだが、この旧訳でも十分読みやすい。2022/09/10
ぽんすけ
19
新訳が出るまで待とうか一瞬悩んだが、創元HPで新訳が4冊でるのに14年もかかってることに気づいて旧訳版にした。さすがに今から65年前の訳なので古い言い回しなのだが、新訳でキャラの性格は掴んでいたのでそれほど苦にはならず。それより字が小さくて印刷が薄いことが気になった。あとタイトルのカブト虫だがスカラベってコガネムシじゃなかったっけ?カブト虫なら角がいるんじゃ?とどうでもいいことが気になる。殺人事件の犯人は多分この人というのが当たってたけど、ヒース部長はそのうちヴァンスのせいで脳の血管切れそうだと思った。2025/04/23
本木英朗
19
ヴァン・ダインの6作目の長編ミステリ。俺は中学、高校、大学、社会人と今までに4回読んだ。3,4回目はもう完全に勝利だったのだが、今回は10年以上空いているせいか、最後までわからなかったなあ。ファイロ・ヴァンスと犯人の闘いなんて、本当に俺には分かんなかったよ。こういうのもいいよね、うふふ。ファイロ・ヴァンスもあと3作か4作は読みたいのだが、次はどうしようかな。2019/05/21
のえる
11
5作目!僧正殺人事件のマザーグースに引き続き、古代エジプトをモチーフにして事件や作品に一種異様な雰囲気を与えているところが好きです。今回はかなりテンポが早いように感じました。犯人は当てられましたが、それでも展開を楽しみに読み進められました。おなじみのキャラは出るものの、もはやマーカムすらヴァンのように半ば空気になって、ワトスン役はヒースに奪われていたような気がします…笑 毎度ながらオチが1番驚愕です😨私はかなり好きですが、賛否が分かれそう…。2020/10/24