出版社内容情報
滑稽でもあり悲しくもある書痴たちの諸相を、書物の達人紀田順一郎が選びに選び抜いた、傑作アンソロジー。ある人は身につまされ、ある人は笑い転げ、書物の魔力に改めて溜息をつくこと間違いなし。
内容説明
書物の魔力に取り憑かれた人々の、滑稽でもあり悲しくもある姿を描いた作品ばかりを、本の達人が選びに選び抜いて編んだ、傑作アンソロジー・海外篇。本好きを自負する人々であれば身につまされ、ビブリオマニアの何たるかをまだご存じない方々は、未知の世界に仰天すること間違いない、読書人必読の書。
著者等紹介
紀田順一郎[キダジュンイチロウ]
1935年横浜生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。商社勤務を経て、日本近代史と書誌学を中心とする研究活動に入る。その後2008年に『幻想と怪奇の時代』で第61回日本推理作家協会賞を受賞。06年から12年まで神奈川近代文学館館長を務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
69
書物愛の関しての海外編のアンソロジーです。全10編が収められていてどれも読みでがあります。フローベールの有名な愛書狂をはじめ怪異ものやシュテファン・ツヴァイクの作品2つまでおさめられています。紀田さんの解説も日本編を含めて当を得ていて参考になりました。2015/06/21
藤月はな(灯れ松明の火)
64
ツヴァイク、キプリング作品は既読。初っ端からフローベルの『愛書狂』の狂的ぶりに冷や汗を掻きつつも『シジスモンの遺産』の書痴を愛した為に婚期を逃し、あの手この手で本への復讐を断行しようとする醜女と本を手に入れるために女に求婚した最低な書痴の攻防戦にゲラゲラ、笑ってしまいました。短いがピリリと締まったミステリー仕立ての『羊毛皮の穴』、『ロンバート卿の蔵書』、『牧師の汚名』も良かったです。2014/05/29
sin
42
これこそ書物愛という作品です。やはり西洋社会においての聖書に裏打ちされた書物に対する愛情は本邦では足下にも及びません。特筆すべきはいずれもシュテファン・ツヴァイクの『目に見えないコレクション』と『書痴メンデル』の二篇。「本が作られるのは、自分の命を越えて人々を結びあわせるためであり、あらゆる生の容赦ない敵である無情と忘却とを防ぐため…」という一文にも心を打たれた思いがします。2014/12/06
りつこ
38
書物への偏愛が過ぎて常軌を逸していく人たち。本の中身よりは本そのもの、古書や希少本にとりつかれる話が多い。求めるあまり正気を失ったり不幸に見舞われる話が多いのに、なぜか彼らは幸せそうにも見える。世間から隔絶された小さな世界で好きな本の ことだけ考え財産の全てを注ぎ込む。ある意味こんな幸せな生き方はないのかもしれない。とくにツヴィクの2編は印象深い。イビツな人間の話だが、彼らに寄り添う貧しい人たち、そして彼らを見つめる作者の目がとても優しい。2015/04/23
かわうそ
25
日本篇よりも書物愛濃度高し。中でもシュテファン・ツヴァイクの2篇は書物(一方は絵画だけど)に取憑かれた人生の切ない結末に涙。反対に「シジスモンの遺産」の争いが次第にエスカレートしてく様はまるでコントのようで大笑い。日本篇・海外篇を通じて「本を読むこと」に執着する人の話は意外と少ないものですね。2014/04/04