出版社内容情報
エリック・マコーマック[エリックマコーマック]
著・文・その他
増田まもる[マスダマモル]
翻訳
内容説明
長い失踪の後、帰宅した祖父が語ったのは、ある一家の奇怪で悲惨な事件だった。一家の四人の兄妹は、医者である父親に殺された母親の体の一部を、父親自身の手でそれぞれの体に埋め込まれたという。四人のその後の驚きに満ちた人生とそれを語る人々のシュールで奇怪な物語。ポストモダン小説史に輝く傑作。
著者等紹介
マコーマック,エリック[マコーマック,エリック][McCormack,Eric]
1940年、スコットランド生まれ。グラスゴー大学を卒業後、1966年にカナダに移住。その後、セントジェロームズ・カレッジで教鞭を執りながら、創作活動に入る。カレッジ引退後の現在もカナダ在住。『パラダイス・モーテル』が長編第一作
増田まもる[マスダマモル]
1949年宮城県生まれ。早稲田大学文学部中退。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
43
「とある医師が妻を殺して解体した部分を自分の子供の体内へ手術して埋めていた」ということを聞いたという還ってきた祖父の話から関係性を見出すことができ、尚且つ暇を持て余していたためにその医師の子供たちの消息を調べる主人公。正直に言うと私は人のことを暴こうとする主人公も突然、いなくなって恥知らずな理由で還ってきた主人公の祖父も嫌いです。グロテスクな子供たちの抱える孤独、安らぎ、嫌悪、自殺と事実との齟齬に翻弄されて明かされた語りの騙り。「死の泉」を連想する程の脳内シェイク度高めのコンクリートジュースのような小説。2012/11/23
syaori
40
三十年間失踪していた祖父が海から持って帰ったマッケンジーの物語、殺した妻の四肢をそれぞれ4人の子の体内に隠すという猟奇殺人。4人のその後の人生を彩る物語もまた奇妙で、傷口に埋め込まれ傷口の膿を養分に生長する植物、26本の棒を体に刺し通す男などのグロテスクで美しいイメージに魅了されました。ただ、この結末をどう捉えれば良いのでしょう。はじめから虚と実の境目の曖昧だった物語の、一体何が真実だったのか。海から来た物語はすべて波に洗い流されてしまい、取り残される寂しさを。「そのことばは浜辺の白い泡と消えてしまう」2017/02/01
*maru*
38
30年もの長きに渡り、行方知れずだった祖父が持ち帰ったある一家の物語。母親の失踪、子供たちとペットの体内に埋められた人間の四肢、腹部に残る大きな傷痕、自己喪失者研究所、ペルソナやシャーマン…。瞬きをするだけで消えてしまいそうな物語だ。だからといって幻想小説として読むにはあまりにも生々しく、直に訴えかけてくるものが多すぎる。参った。奇想に溢れたグロテスクで淫靡でシュールなこの世界観、どこをとっても好みすぎる。さて、真偽のほどは…パラダイス・モーテルのバルコニーで、灰色の海を眺めながらゆっくり考えますか。2019/06/28
ミツ
29
“それが人生というものだ。小説のふりをしたひと握りの短編というやつが”ブラック、グロテスク、シュール!とは帯の謳い文句だがむしろそれらを通り越して悪趣味ド変態暗黒猟奇的奇想小説というのが正しい。肉体的嫌悪感・精神的不快感を伴う数々の挿話は強烈な印象を残し、おぞましい悪夢のごとく妖しい魅力を放っている。謎を追い求め、知ろうとすればするほど複数の人物の語り/騙りの中に物語は拡散し、波音の中に消える。やがて収束する物語の行き着く先にあるもの、それは真実だったのだろうか?ベタといえばベタだが、良い作品だった。2016/08/19
KI
28
僕は今日いなくなった。それなのに、自分だけが取り残されてる。2020/07/31