出版社内容情報
ロコス亭に集まる奇妙な人々は物語の内と外、物語と物語の間を自在に行き来し、読者を虚構と現実のはざまに誘う。ラテン・アメリカ文学の原型と言うべき知的で独創的な小説集。
内容説明
誰にも存在を認めてもらえない哀れな男、葬儀があればどこへでも飛んでいく謎の女、指紋理論に固執するあまり自ら逮捕されてしまう男。“ロコス亭”に集まる奇人たちが物語と物語の間を、そしてその内と外を自在に行き来し、読者を虚構と現実のはざまに誘う、知的で独創的で、とてつもなく面白い小説集。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コジ
28
奇人集まるロコス亭が基本の舞台。そこに作者がいて常連客をモデルに物語を描く。つまり、作中で書いた作品が現実の物となった体で書かれている。これだけでもややこしいのに、登場人物が(作中の)現実に出てきて書きかけの作品の続きを勝手に書いてしまう、ある作品で登場した人物が役柄を変えて別の作品に登場するなど結構やりたい放題。だからといってふざけた内容かと思えば意外とシリアス。自分としては「死」を愛し「死」に愛された女性を描いた「ネクロフィル」が良かったのだが、おくがき、解説どちらもこの作品については言葉少なめ。 2019/05/24
syaori
27
ロコス亭に集う人々が織り成す奇妙な味わいの短編集。そもそもロコス亭が登場するのは最初だけで、あとはロコス亭の人々が時に作者に従い、時に気ままに披露するお芝居を見ているという感覚が近いでしょうか。それぞれの話はつながっていそうなのですが、話ごとに人物設定が微妙に変わったりして、そこを考え始めると「もどかしい…」という状態に陥ります。しかしこの本ではそれも楽しさのうち。物語の面白さに、今度の話はこの人が主人公で、この娘はこういう役柄なのかと考える楽しみが加わり、読み進むほど面白さが増していく不思議な本でした。2016/06/23
miroku
26
面白い短編が多い。だが登場人物たちの役柄が短編ごとに変化するので、その点が煩わしい。別な人物と言う設定で良いのに・・・・・・。2015/02/13
きゅー
13
冒頭から作者が登場し、作中人物と会話を始める。しまいには「彼らが勝手に動いてしまうので困るんだよ」なんてボヤキも。同一人物が物語ごとに役柄を変えながら登場するというのも面白い。例えばルナリートという少女はバエスの娘だったり、尼僧だったりとその都度異なる人物として登場する。彼らは決められた役柄とは別に、自らの意志を持って行動しようともする。そうした現代的な技法と対比するかのように、どこか古き良き時代を思わせるような牧歌的な悪漢小説が繰り広げられる。その揺れ幅の大きさが魅力の一つでもある。2018/04/11
ネロリ
12
何やら胡散臭いプロローグから幕を開ける連作短篇は、癖のある役者たちによって関係性と背景を変えながら繰り広げられる。度々強調される“スペインらしさ”の場面が、スペインにとってのタブーを扱うことで滑稽に映り、劇中に出たり入ったりの作者とホセ・デ・ロス・リオス博士が、押したり引いたり広げたりして虚構を操ると、負けずに役者も怪しい動きを見せて、読んでるこちらはニヤニヤしてしまう。“スペイン”てんこ盛りの「財布」がとても好き。2012/08/11