出版社内容情報
ツヴェタン・トドロフ[ツヴェタントドロフ]
著・文・その他
三好郁朗[ミヨシイクオ]
翻訳
内容説明
それまで曖昧だった幻想文学の定義づけに対し、トドロフは、テクスト内で語られる奇怪な出来事について、合理的な説明をとるべきか、超自然的な説明をとるべきか、読者に、たえず「ためらい」を強要することこそが、幻想文学の構造的特性であるとした。ポトツキ、ポー、ホフマン、カー等々を俎上に載せる、構造主義的文学研究。
目次
1 文学のジャンル
2 幻想の定義
3 怪奇と驚異
4 詩と寓意
5 幻想のディスクール
6 幻想のテーマ群・序論
7 「私」のテーマ群
8 「あなた」のテーマ群
9 幻想のテーマ・結論
10 文学と幻想
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- 評価
孤独な建築家の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
18
凄まじく面白い。日本語でファンタジーというと英米の批評家もそう捉えるように、トールキンとかローリングとかの魔法世界をイメージする。しかし、トドロフのいう幻想小説、つまりはフランス語でのlittérature fantastiqueは、ポーのように現実世界に起こる超常現象を無理やりな論理で説明する「怪奇小説」と、物語での超自然現象をそういうものだと受け取る「驚異小説」との間で、どちらの読みをするべきか「ためらう」ところに存在するものらしい。1968年のやけに熱気にあふれた野心的文学論。2016/04/24
eirianda
14
英米の幻想文学はいわゆるファンタジーだが、フランスでは不条理系のものを幻想文学というらしい。曖昧模糊とした結末、驚異と怪奇の世界の手前、精神病的、薬物中毒的、幼児的世界…。(誤読してたらすいません) とりあえず、ネルヴァルの『オーレリア』は読んでおきたいと思った。まあ、ジャンルって実際のところ線引きしにくいよな。2016/09/23
刳森伸一
3
「幻想小説」の本質を、超常的な現象を合理的に説明する「怪奇小説」と、超常的な現象を実際に起こったこととして解釈する「驚異小説」との間で生じる「ためらい」にあるとする小説論。序説のタイトル通り、語られている内容は、「幻想小説」の定義と「幻想小説」に内包するテーマぐらいに限られているが、それでも十分に刺激的な論考である。2021/08/05
大明神
3
幻想文学において、読者は特定の読み方を要求され、作中の現象が、超自然的説明がなされるのか、合理的説明をなされるか、というためらいの中に置かれる。 幻想文学においては、性衝動と視線というのが頻繁にテーマとして表れる。性衝動は、無意識に関する問題であり、視線とは意識に関する問題である。2013/07/14
うどんの人鳥
2
幻想文学の条件が「ためらい」ということにぱっと見違和感を感じたのだが、最終的にカフカ的(幻想)小説の話に移るにつれて、それまでの幻想文学の条件を失っても異なったタイプの「ためらい」を保持することを知り合点がいった感じだった。 結局現実と文学的空想の二つ、その狭間を綱渡りする全体の構造を保持することが幻想を生み出す必要条件であるのには違いないのだろうか……?2014/11/29