内容説明
葛原妙子、塚本邦雄、中城ふみ子、寺山修司、春日井建、浜田到…戦後短歌のきらめく星座は『眠るひとへの哀歌』の詩人・中井英夫によって不滅の輝きを放つことになった。『水星の騎士』ほかの全詩篇、短歌論集『黒衣の短歌史』『暗い海辺のイカルスたち』、新資料「中井英夫・中城ふみ子往復書簡」を完全集録。
目次
詩篇
黒衣の短歌史・現代短歌論
暗い海辺のイカルスたち
中井英夫・中城ふみ子往復書簡
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
22
中井と中城ふみ子の往復書簡がどうしても読みたくて手に取った。 『冬の皺よせゐる海よ今少し生きて己の無惨を見むか』 『肉うすき軟膏の耳冷ゆる日よいづこにわれの血縁あらむ』(『乳房喪失』より) 『灯を消してしのびやかに隣に来るものを快楽の如くに今は狎らしつ』(『花の原型』より) 中城ふみ子の歌に棲んでいるのは、乳房を喪失した病床の女ではない。 世間の良識に一身で抗い、スキャンダラスな恋に走る異形の女である。 一見、与謝野晶子のような愛を歌った歌人と見まがうが、その凄まじいまでの生への渇望が異形なのだ。2015/08/12
しあん
3
この巻に含まれる幾つかの詩に感動を覚えて購入しました。『緑の教え』という詩の「安らぎはとうに果てたが」という一節に、むしろ安らぎに近い静謐のようなものに包み込まれるような感覚を覚えます。『蝕』の「もう僕を指さすのはよし給え 生まれた時から日蝕だった 唇を抑えて生きてきたんだ」という言葉からは同性愛者であった中井の苦悩が垣間見えるように思うのです。『草上哀歌』の澄み切ったような世界観には涙が零れました。
ゆづたろう
1
短歌の読解力が欠如しているから、前半は今ひとつピンとこなかったけど、中城ふみ子や寺山修司が登場してくる辺りから、中井英夫の青春記として楽しみました。特に巻末の中城ふみ子との往復書簡は、それまでの流れを読んだ後だけに、下世話な興味もあってだけど、引き込まれました。2011/09/15
しあん
0
この巻に集録されている詩の幾つかに感動を覚えて購入しました。『緑の教え』の中の「安らぎはとうに果てたが」という一節には、ひどく穏やかなものに包み込まれるような感覚を覚えます。『草上哀歌』を読んだ時は、悲しく澄み切った詩の世界に涙が零れました。『蝕』という詩の一節、「もう僕を指さすのはよし給え 生まれた時から日蝕だった 唇を抑えて生きてきたんだ」この言葉に、中井英夫が幼い頃から感じていたであろう現実への違和感が推測されます。これは、中井がセクシャルマイノリティだったということも影響して発せられた言葉なんだ
hello_hello
0
再読。中城ふみ子との書簡の完璧なドラマ。2009/08/09
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