出版社内容情報
互いが、互いにとって?非日常″。
そんなふたりの距離は近づくか?
春の宿、夏の墓参、秋のドライブ、
そして――冬の宿。
それぞれの季節に一度ずつしか
会うことのなかったふたりの一年を描いた、
絵画のような恋愛小説。
婚約者ともうすぐ旅行に出かけるはずだった女と、その婚約者の代わりに旅に同行することを申し出た男。なぜか承諾してしまった女は、それまで見ず知らずだった男と春の宿で一夜を過ごすことになる――。春の宿、夏の墓参、秋のドライブ、そして冬の宿。葬儀場での出会い以来、それぞれの季節に一度ずつしか会うことのなかったふたりの一年を四章仕立てで描いた、絵画のような恋愛小説。『眠れない夜にみる夢は』の著者の新境地的傑作。
内容説明
自分を裏切った恋人ともうすぐ旅行に出かけるはずだった女、その恋人の代わりに旅に同行することを申し出た男。なぜか承諾してしまった女は、それまで見ず知らずだった男と春の宿で一夜を過ごすことになる―。春の宿、夏の墓参、秋のドライブ、そして冬の宿。火葬場での出会い以来、それぞれの季節に一度ずつしか会うことのなかったふたりの一年を四章仕立てで描いた、絵画のような恋愛小説。『眠れない夜にみる夢は』の著者の新境地的傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
109
恋人の裏切りを知った沙奈。そしてその男の葬儀の火葬場の喫煙所で出会った役者の鳴宮。死んだ恋人と出かけるはずだった旅に行くことになった二人。さらに真夏に鳴宮の祖母を連れての墓参、秋にはドライブ、そして冬の宿と季節に1度しか会うことのない二人。会話はぎこちなく旅館の同じ部屋にいても何も起こるわけではないが、そんな二人が次第に近づく。四季の様相が優しく彼らをつつみこみ、静けさの中に時が流れる。とてもきれいな文章。心地よい読書、素敵な時間…2025/08/06
のぶ
81
火葬場で出会った男と女の一年間の物語です。こんな上質な恋愛小説には久々に出会った、と思わせてくれた作品だった。主人公のふたりが、それぞれの季節に旅をして、お互いを知っていくが、この緩やかな過程がとても心地良く、読み終えるのが惜しく感じました。旅先での情景描写とふたりの心理描写が絶妙で、非日常な空間とふたりの関係性がとても美しかったです。ラストは切なくも温かい気持ちになり感動を隠せなかった。現実でこんな体験はとてもできないだろうけれど、これも読書の楽しさだと思った。2025/01/23
星群
78
出会いが火葬場だった2人、どんな未来が待ってるかと想いながら読み進めたら、終始私好みの恋愛模様でした。季節が進むことに、手探りながらも縮む2人の距離感。彼のお祖母さんを交えた夏のお墓参りの場面が、中でもお気に入りです。自然にお祖母さんへの親愛の情が滲み出ている彼の姿勢がとても素敵で、私にもこんな素敵な王子様(えっ!?)が現れないかなぁと切実に思ってしまいました。2025/02/24
seacalf
62
すっと文章が身体に入ってくる、この2人の物語をずーっと読んでいたいと思わせてくれる小説。恋愛小説といえば、そうなのだけど、甘すぎない2人の歩み寄りや交流がとてもいい。偶然火葬場で出会った2人がその場の勢いと衝動に駆られて共に旅に出て、細い糸ながら春から夏、秋へとつながっていく。思考のパターンであったり、歩幅であったり、少しずつお互いの感触を認識し合っていく過程の描かれ方が好ましい。こういう小説に出会えるからいまだに本を読み続けているんだと思い出させてくれる。読書の喜びに浸れる稀有な一冊。今年のベスト入り。2025/09/26
konoha
58
「眠れない夜にみる夢は」が良かった深沢さん。さらに純度が高く素敵な恋愛小説を生み出してくれた。父親、恋人をそれぞれ亡くした男女が火葬場で出会い、春夏秋冬一回だけの旅を通じて静かにゆっくりとお互いを知っていく。深沢さんの小説が好きなのは、恋愛より前に人と人が向き合うことを丁寧に書いているから。鳴宮さんはチャラいし、藤間さんは危なっかしくて面倒。でも、2人だけが知る魅力やダメさが愛おしかった。最終章はドキドキした。四季折々の旅先の光景が美しい。喪失の痛みを抱える大人の再生の物語としても味わい深い。2025/02/04