出版社内容情報
デイスが偶然拾った〈太陽の石〉の肩留め。それが眠れる魔道師を目覚めさせ、デイスの奥に潜む記憶を呼び覚ます。『夜の写本師』『魔道師の月』で話題沸騰の著者の第3長編。
内容説明
歴史に名を轟かせたコンスル帝国も、内乱や疫病、隣国の侵攻によって衰退し、いまや見る影もない。霧岬はそんな帝国の最北西に位置する。三百年ほど前、魔道師イザーカト九きょうだいのひとりリンターが空からふってきて、地の底に達する穴をうがち、ゴルツ山を隆起させたのだという。霧岬の村に住むデイスは十六歳、村の外に捨てられていたところを姉に拾われ、両親と姉に慈しまれて育った。ある日ゴルツ山に登ったデイスは、土の中に半分埋まった肩留めを拾う。金の透かし彫りに、“太陽の石”と呼ばれる鮮緑の宝石。これは自分に属するものだ…。だが、それがゴルツ山に眠る魔道師を目覚めさせることになろうとは。『夜の写本師』『魔道師の月』で話題沸騰の著者の第三長編。
著者等紹介
乾石智子[イヌイシトモコ]
山形県生まれ、山形大学卒業。1999年教育総研ファンタジー大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
あわいの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
文庫フリーク@灯れ松明の火
98
『夜の写本師』感想で「これはもっと長いシリーズとして最初から展開して欲しい」と書いたが、乾石さんは遥か上手だった。何時の間にか〈オーリエラントの魔導師〉シリーズとして堂々の展開。前作の大地の魔導師レイサンダーや暗樹、デビュー作のアンジスト等、微妙なリンク感じさせながら、とても268ページとは思えぬ読了感。現実に考えて、同じ親から血を授かった兄弟姉妹が憎しみあい、殺しあう程悲しく痛ましいことはない。イザーカト9人兄弟、ナハティには暗樹が憑いていたのだろう。本来の明晰さと弟のために一度縫いあげた刺繍を→続く2013/02/07
ひめありす@灯れ松明の火
65
母親よりも無責任で、恋人よりも触れあう事を躊躇わない。友よりも本音が過ぎて、妻よりも共に生きる時間が短すぎる。横暴で、頼りなく、意地っ張りで、そして誰より情愛深い姉という存在。後から生まれる弟妹を護る為に、先に生まれて誰より強く優しくあろうとした彼女。その歯車が違えたのは何時だろう。解き刺し直された刺繍、幼い手が抱えた幼すぎる命。何も変わらないはずなのに。天の太陽よりも近く、肩には太陽の石。その温もりは今はもう自分の方が大きい。でも絶対的に大きくて暖かだったあの手の温もりに優しく肩を抱かれている気がする。2013/02/16
ちはや@灯れ松明の火
60
大地へと降り注ぐ陽、水を浴び風を受け、育まれる緑なす生命。その根元に蹲る影、光強ければ更に濃さを増す。血の絆で結ばれた九つの魂、温かな喧騒の中共に過ごした還らぬ日、一つ、また一つと別たれては時の流れを枕に眠る。太陽を宿す鮮緑の石が手繰る縁、情愛の反転した憎悪の鎖、還ることなき赤銅の骸、砕け散った青金石。強く固く繋がるが故に断ち切り難く、闇を喰らい闇に呑まれし白銀は漆黒よりも尚昏く。けれど生命は地の底から幾度も芽吹く。光と闇、溶けあうことはなく、離れることもなく、数多の昼と夜を繰り返しては生命の環を描く。 2012/12/03
Norico
52
引き続きオーリエラントの世界に浸ります。シリーズは同じでも、時代が違うので、まったく別のお話。でも、登場人物は、あの人の子孫らしきお名前。前作で、レイサンダーが姓を名乗るシーンがあるのは、ここにつなげるためなのね。暗樹を目覚めさせてしまったのは、誰にも理解してもらえないという哀しさや悔しさからなんだろう。やるせない。2015/09/14
ゆきちん
48
「夜の写本師」シリーズ③「魔道士の月」のレイサンダーの太陽の石が主役?かなぁ。姉に拾われたデイスは16歳の時に太陽の石がついた肩どめを拾う。それがきっかけで300年前の伝説の魔道士が目覚めてしまい、旅について来いと言われ…魔道士イザーカト9人きょうだいの骨肉の争いの話。やっぱりきょうだいっていいよねって話と、きょうだいだけにこじれたらややこしいよね、って話。切ないよねぇ。あと、今までで一番読みやすかった。話が飛ばなかったからか、慣れたからか…次、シリーズ名にもなる「オーリエラントの魔道士たち」へ。2017/02/13
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