出版社内容情報
隆盛を誇る平安の世が、「源氏物語」をなぞらえはじめた?! 権力を欲しいがままにする道長に、紫式部が自作を通して仕掛けた罠……物語に秘められた式部の思いやいかに。大人気シリーズ最新刊。
内容説明
紫式部が物語に忍ばせた、栄華を極める道長への企みとは?平安の都は、盗賊やつけ火が横行し、乱れはじめていた。しかし、そんな世情を歯牙にもかけぬかのように「この世をばわが世とぞ思う…」と歌に詠んだ道長。紫式部は、道長と、道長が別邸にひそかに隠す謎の姫君になぞらえて『源氏物語』を書き綴るが、そこには時の大権力者に対する、紫式部の意外な知略が潜んでいた。
著者等紹介
森谷明子[モリヤアキコ]
神奈川県生まれ。2003年、王朝ミステリ『千年の黙異本源氏物語』で第13回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。卓越した人物描写とストーリーテリングで高い評価を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
122
紫式部が良かった一冊。今作は道長の栄華を軸に源氏物語「玉鬘」と「若菜」にスポットを充てて描いたストーリー。作者が疑問に思う点を見事に創作という名の解釈に仕立て上げる技に今回もどっぷり魅了された。今や飛ぶ鳥も落とす勢いの道長をどんな想いで紫式部は見ていたのか。節々の二人の会話が含みを持たせながら、道長へのあっと言わしめる源氏物語という贈り物が実に痛快爽快。盗賊や火付け事件の多発の裏側に隠された謎、そこに自らの想いを馳せ、執筆に向き合う紫式部が良かった。物語が人を創る、そんなことを全体的に感じられた巻に満足。2024/04/02
がらくたどん
53
源氏執筆秘話三部作の最後は光源氏の老いへと向かう姿を描く第二部の幕開け『若菜』を副題に置く。光る君の物語はなぜ直前の「藤裏葉」で描かれた源氏の「四十賀」でハッピーエンド完結しなかったのか?大団円の「藤裏葉」の直前に仕込まれたイケオジ源氏の若き日の恋人の忘れ形見玉鬘への寛容でプラトニックな愛を描いた「玉鬘十帖」道長と瑠璃姫を模したようなこの物語の思いもよらない「意図」が権力掌握に邁進する道長と鄙育ちの一人の少女の運命に絡む。怜悧な筆が紡ぐ一介の物語は権力に動かされる運命の奔流に抗う櫂の役目を果たせるか?逸品2024/07/20
kagetrasama-aoi(葵・橘)
40
「王朝推理絵巻 三部作」第三巻。実際の歴史上の人物がとても上手く絡んで、読み応えがとてもあった今巻でした。出来たら脩子内親王をもっと描いて下されば、より嬉しかったんですが。実際に「源氏物語」の玉蔓の帖に名前がある “瑠璃” 姫の謎がするすると解かれていく件は圧巻でした。阿手木と義清の息のあった様子も心地良かったです。三部作読んで「源氏物語」読みたくなったけど、原文では流石にハードル高いです、老の身としては。田辺聖子氏の「新源氏物語」再読しようかしら!文庫本の解説は荻原規子氏、お得感一杯でした。2024/02/19
Norico
34
森谷さんの紫式部のシリーズ第3弾。一気に読んでしまった。今回は、「若菜」や「玉鬘」が書かれた頃のお話。なんか、本当にこんなことがあったんじゃないかと思ってしまう単純な私(笑)出てくる和泉式部や瑠璃姫などの女性たちがとても魅力的。瑠璃さんというと、どうしても「なんて素敵にジャパネスク」思い出しちゃうんだけど。こちらの瑠璃さんも、自由でしたたかで一途でかわいい。秋津もこれから幸せに暮らしていけるのかな。2015/01/25
雪紫
33
紫式部のまわりで色んなことが起きつつも(後半の火付けの動機にうっ、となる)書かれる源氏物語と執筆した経緯の謎。そして時間は「千年の黙」の結末へと。前2作のネタバレを含めながらも。長編連載あるあるの設定矛盾にもきっちり書きながら(笑)。しかし、源氏物語の先が気になるファン達の描写本当に楽しいな。それでいてこの物語の「千年の黙」の結末にたどり着いた時、最初にあっちを読んだ時以上にスカッとしてしまった。2020/01/15