内容説明
明治二十四年の函館に発足した、小さな警察署。ロシアやイギリスなどの船舶が来航するというこの土地特有の事情に対応するため、署には外国語に堪能なものが集められ、小蒸気と端艇を有していた。個性豊かな署員たちを指揮するのは、アメリカ放浪経験をもつフェンシングの名手・五条文也警部。ラッコ密猟船の水夫長変死事件や、英国軍艦の水兵の切ない失踪事件などを解決するため、署員たちは日夜陸と海を駆ける―。完全復活を遂げた著者が放つ、珠玉の時代警察小説。若き日の森林太郎(鴎外)の知られざる函館訪問記「坂の上の対話」を併録。
著者等紹介
高城高[コウジョウコウ]
1935年北海道函館市生まれ。東北大学文学部在学中の1955年、日本ハードボイルドの嚆矢とされる『宝石』懸賞入選作「X橋付近」でデビュー。大学卒業後は北海道新聞社に勤務するかたわら執筆を続けた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
77
明治の函館を舞台に、アメリカ帰りのハンガリー貴族にフェンシングを仕込まれた異色の警部五条文也を主人公の警察小説4編と、森林太郎(鷗外)が主人公の番外編を合わせた一冊。だが、ミステリとしてよりも、当時の函館の風俗風物を描いた小説として興味深く読めた。文体はややゴツゴツした感じ。鷗外は医者としては脚気の原因を見誤るという過失を犯したというイメージが強いが、本作ではt函館に突如発生したコレラの原因を探って、名探偵振りを遺憾なく発揮。淡い恋も微笑ましい。脚気については、やっぱり誤った見解を披露しているけどね。2016/05/24
Roko
28
明治初頭の函館は、当時物流の主流だった蒸気船の燃料及び水の補給地として重要な場所だったことが良くわかります。函館港には日本船だけでなく外国船もやってくるので、その船が運んできた物の確認及び税の徴収をする税関の仕事も発生します。当時は毛皮の需要がかなりあったので、ラッコ、アザラシなど、海獣の漁が盛んで、アメリカ、カナダ、ロシアなどの船が漁をしていました。高額商品であるだけに、密輸入をしようとする人も当然いるわけで、その取り締まりの仕事はとても危険なものでした。そんな歴史を知ることもできて、楽しい読書でした。2024/09/02
ぐるぐる244
12
随分前に桜庭一樹の読書日記で気になっていた作家。明治時代の函館を舞台に、函館水上警察署の五条警部を主人公にした4作と若き日の森鴎外が探偵役の「坂の上の対話」。密漁船やイギリス、ロシアなどの軍艦の寄港地として栄える函館の街。森鴎外は脚気はやっぱり細菌が原因では、って言ってる…2024/06/13
スプリント
10
明治の函館を舞台にした小説。 維新の英傑も登場するので歴史が好きな人にはお勧め。 2023/12/02
紅羽
7
図書館本。明治の函館の姿を想像出来る時代小説でした。ミステリとしてはやや物足りなさは感じましたが、実名の偉人たちも登場すると気分が高揚しました。2014/11/02