感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんすけ
11
全集第11巻は『幻滅』の前半を所収する。 都会人には判りやすい『幻滅』だ。だが、田舎者ばかりとなった東京では理解できる読者が皆無となった物語でもある。 地方の天才は都会の凡人。地方のスタイリストは都会のチンドン屋。そう表現もできる物語である。 しかしリュシアンは凡人でチンドン屋だったほうが幸福だったとも考えさせる。 地方都市アングレームで詩人として頭角を現したリュシアンはパルジュトン夫人に恋心を抱く。 それは地方都市の醜聞だが、パリでは噂にすら値しないものだった。 この誤解から生じる悲劇が幻滅を意味する。2019/05/01
うずまき
1
「幻滅・上」収録。訳違いで数ヶ月ぶりに読み返したら、初読の時より数倍面白かったわ。いや私の邪念を抜いても(笑)たぶんね、主要登場人物がほとんど頭に入った状態で読んでるから、尚更面白いんだと思うのよコレ。いやあれ初読の時は、ゴリオ・ビロトー・十三人組の後で、まだ知識量が全然だったし…リュシアンにイラッとする部分が大きかったわけだけど、今は単純にアホすぎて可愛いよなヤツはと思う…(完全に邪念と似非神父目線コミコミ)2009/10/06
v&b
0
『幻滅』前半部2015/03/24
qbmnk
0
才能ある青年が田舎でささやかな幸せを感じながらも、狭い社会には収まりきらないためにパリに出て都会に翻弄されるというバルザックらしい展開の物語の前半部分。今回は芸術とジャーナリズム、芸術家とパトロンとジャーナリストが主要な構成グループとなっている。他の作品の主人公たちがあちこちで顔を出し、当人の物語では初め翻弄されていた社交界のやりとりをすでに我が物として成長している姿が垣間見られるのも楽しい。本作の主人公は心の優しい(弱い)詩人で読んでいてハラハラするし心配になる。後半部分も楽しみである。2023/05/01