内容説明
仕事や恋愛に行き詰まりを感じ、ニュージーランドへと旅立った刑事・城島。かつて事件捜査で出会った格闘家のガトロ・スチュードたちとともに、ガトロの祖父で一族の長テ・ケレオパの邸宅へ向かうことになった。その人里離れた山奥に佇む日本家屋には格闘家一族が呼集されており、テは彼らに対し、最も強いものにすべての権力と財を譲ると告げる。具体的なことをなにも知らされず、一族が困惑する中、嵐と火山噴火によって屋敷が孤立したのと同時に、一族の男の扼殺死体が発見された。はからずも日本から遠く離れた異国で捜査をすることになった城島。しかし第二の殺人が勃発し…。予想外の展開の末に待ち受ける、驚天動地の真相とは?気鋭が満を持して放つ、たくらみに満ちた傑作本格ミステリ。
著者等紹介
伯方雪日[ハカタユキヒ]
1970年京都府生まれ。京都大学工学部精密工学科卒。書店勤務の傍ら、執筆活動を展開。2003年、短編「必然なる偶然」が『創元推理21』に掲載されデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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雪紫
49
再読。前作の事件から時は流れて、仕事と恋愛に行き詰まった刑事、城島(恋人前作と変わってます)。彼は再会した格闘家に誘われ、彼のいるニュージーランドへ・・・。ニュージーランド、だが遺産相続で日本家屋のクローズドサークル、それで独自の格闘技と好きなもん詰め込んだが、こうして再読すると意外と王道ミステリ(第3の事件とか)。前作同様、最強と格闘に憑かれ、疲れたもの達の物語で格闘の雰囲気も魅せてくれるが、日本に帰った城島が吹っ切れてどうなるかが謎で終わらすのかがちょいもやもや(まあ、舞台が舞台だから)。2022/05/27
rosetta
20
★★★✮☆典型的な嵐の山荘物。仕事にも女性関係にも燃え尽き気力を無くした警視庁刑事の城島。格闘技ファンで童顔な35歳にもなって一人称は僕。休暇を取り知り合いの格闘家を訪ねてニュージーランドへ。祖父が築き上げた柔術を駆使するマオリ族の血を引く。山奥の宏壮な日本家屋に集められた一族は最も強い者に全てを与えると祖父が宣言したその日から1人づつ殺されていく。戦前と繋がる祖父の来し方、謎の日本人。見取り図もついて本格系を堪能。2020/08/16
zazo嶋
5
ミステリ・フロンティア。前作ほど格闘技には寄らず、ミステリ面に重きを置いた雰囲気の作品になっています。格闘技+一族の血縁+復讐+ミステリ...という感じでしょうか。個人的には全ての部分が中途半端な印象を残してしまった気がして残念です。ミステリの部分では連続殺人、しかも外部から「閉ざされた館」というシチュエーションにも関わらず、その動機やインパクトも薄く、連続殺人の真相も...かなーり...微妙。かつ苦笑。得意の格闘技パートも今作はやや薄めで、これだったら単純に人を殺める為の格闘技、柔術に焦点を絞っての創始2010/08/03
ボトム
4
ちょっと無理があるかなと感じることもあるが格闘技+ミステリーの組み合わせはオリジナリティがある。2019/07/13
たこやき
4
クローズドサークルで起きる事件、という形は取っているものの、ミステリとして考えるとやや反則気味のトリックがあったりと微妙な印象。うじうじとした主人公もちょっとイライラする。ただ、形を作りながら、描きたかったのは強さへの渇望と、そこにある狂気なのかな? と思う。ある意味、前作『誰も私を倒せない』と共通しているわけだが、そこで描かれた渇望が突き進んだ先にあるのは何か? それを描いたのかも。読了後、前作について調べて、それをふと思った。2010/10/11