内容説明
ある日萬朝報に載った『記憶に自信ある者求む』という求人広告。昔から見たものを瞬時に覚えてしまう力に長けた博一は、義父の勧めもあってその募集に応じ、見事採用となった。高い日給を受け取りながら、大学教授から記憶力の訓練を受けていた博一だが、あるときを境に急に教授と連絡が取れなくなり不安を覚える。そこで友人である高広に相談を持ちかけたところ、『赤髪連盟』に酷似したこの出来事に、礼が興味を示し―(表題作)。心優しき雑誌記者と美貌の天才絵師。ふたりの青年の出会いをはじめ、明治の世に生きる若者の姿を、人情味豊かに描いた四編を収録した短編集。好評“帝都探偵絵図”シリーズ第二弾。
著者等紹介
三木笙子[ミキショウコ]
1975年秋田県生まれ。第二回ミステリーズ!新人賞の最終候補作を改稿し連作化した『人魚は空に還る』で2008年にデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nyanco
53
表題作は現代の珍事件から物語が始まるのですがこれは別に要らなかったのでは?外伝的物語も語られ、どれも面白い。ただ、どの主人公も養子、義理の親子関係、親を亡くした…という設定に偏ってしまっているのが気になる。同じ境遇の高広が共感して…というのは解るのだが、どうも一辺倒になりがち。今回は肝心の礼と高広の活躍が見られないのが何とも寂しい。前作でBL紛いとの悪評があったせいで二人の絡みを封印してしまったのでしょうか。ラストで二人の出逢いのエピソードが…。これでいよいよ次は二人が大活躍?楽しみにしています。2010/01/16
ちはや@灯れ松明の火
52
明治の帝都が誇る主従逆転ホームズとワトソンを取り巻く人々の関係は透明な糸のような繋がりだ。良くも悪くも強い拘束力を有し時として容易く憎悪へと変じる血の絆の赤は、其処には無い。探偵小説が生んだ出逢い、行き違う義理の父子たちの思い、事件を通し知りあった少年と彼の学友、かつて英国紳士と人形師と生人形が過ごした日々。透明な絆は目に見えないが故に時折絡み縺れ見失いそうになる。事件と呼ぶには美しくも優しすぎる謎たち。血によって自然に生じたものではなく、不器用な試行錯誤と共に育まれた情もまたあたたかい。2010/01/31
ピち子
41
◆借物◆ 【○】 前作に引き続き、この時代ならではの縁や情といったものの丁寧な描写が好印象♪ 前作は外(外界)に向けて開かれた物語という感じだったが、今作は内(主人公二人に縁のある身近な人)に焦点を当てた手の届く範疇の現実的な出来事が描かれていたように感じ、高広と礼がホームズとワトソンよろしく事件を解決していく…というワンパターンになりがちな構図を覆した事に、とても好感が持てた。 各話では「氷の~」のタイトルの意味が斬新で目から鱗だったし、「生き~」の最終ページの喜平の独白に不意に目頭が熱くなった。2011/02/19
藤月はな(灯れ松明の火)
40
大好きなシリーズの続編が読めてすごく嬉しかったです。前作について色々、邪推してしまったので作者さんが嫌に思ったかもしれないと想像すると反省するしかありませんorz人の人の欲や互いの気持ちの齟齬から起きるわだかまりに遣る瀬無くなりながらも物語に散りばめられた人情味と人の心の優しさに読了後、とても幸せな気分になりました。主人公たち以外の人たちの話もすごく、嬉しかったです。2010/02/01
yourin♪
39
ホームズ役が心優しき雑誌記者、ワトソン役が美貌の人気天才絵師、 そんな<帝都探偵絵図>シリーズの第2弾。 4編ともとても面白かった! 内2編は主役2人以外にスポットライトが当たるのですが、それによってこのシリーズの深みが増した気がします。 でもやっぱり高広x礼の掛け合いが足りないわぁ~。 第3弾では「お前がホームズ、僕がワトソンだ。さあ事件を解決しろ」という礼の無茶ぶりっぷりをいっぱい見れますように~♪2011/05/16