内容説明
植物写真家の猫田夏海は北海道の撮影旅行の最中、「神の森で、激しい土砂崩れにより巨木が数十メートル移動した」という話を聞き、日高地方最奥部の古冠村へ向かう。役場の青年の案内で夏海が目にしたのは、テーマパークのために乱開発された森だった。その建設に反対していたアイヌ代表の道議会議員が失踪する。折しも村では、街路樹のナナカマドが謎の移動をするという怪事が複数起きていた。三十メートルもの高さの巨樹までもが移動し、ついには墜落死体が発見されたとき、夏海は旧知の“観察者”に助けを求めた!“観察者”探偵・鳶山が鮮やかな推理を開陳する、謎とトリック満載の本格ミステリ。
著者等紹介
鳥飼否宇[トリカイヒウ]
1960年福岡県生まれ。九州大学理学部卒。2001年、『中空』で第21回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞してデビュー。個性的な書き手として近年さらに評価が高まっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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瑞佳
46
すっきりと澄んだ空気を感じた。この清らかさは、お伊勢さんの境内を歩いているときのさらさら感に似てる。アイヌの言葉や風習の描写も興味深かった。犯人の動機には意外性があって驚かされるが、その心情は作品のテーマと相まって痛痛しく理解できる。傲慢な人間の愚かな宴の最期は、虚しく辛くやるせない。だが、清しい陽の光を浴びた巨大なハルニレのそばで、鳶さんが語るもうひとつの真相がなんとも心憎くて、しっとりとした優しい余韻に救われる。そして儚く散った恋心に切ない想いがつのる。泣くな、ネコさん。2018/03/14
しゅてふぁん
24
観察者シリーズ第3弾。今回の舞台は北海道。街路樹のナナカマドや巨木ハルニレが移動するという怪事件が続く古冠村。毎度の如く、猫田さんの小気味いい語り口が面白い。ボケ、ナス、に続けるとしたら、冬に白い花をつける高木のサザンカあたりがバランスがとれる、というのがお気に入り。今回もジンベーが出てきて楽しかった。2017/05/07
pulpo8
24
鳥飼さん初読み。桜庭一樹「少年になり、本を買うのだ」より、気になったので読んだ。九州大学理学部生物学科って、石持さんと全く同じプロフィール。動機に凄く石持さんっぽさがあったので、まさか九州大学理学部は皆こんな感じなのか…?と興味が湧いてしまった(笑)。その動機が自分にはなんとなくしっくりきて、胸がぽっとなる。木が動く、というからもっと壮大なものを想像していたのだが、地滑り、最初から人力、と案外地味で絵にならない…。推理はその程度で拍手?となる。鳶山の蘊蓄は面白く、辞書を信じすぎないようにしよう、と思った。2016/10/27
Taka
7
連続鳥飼さんに胸焼け気味。動く木のお話。なんの意味があるのかわからない木を移動させる行為にちゃんとした理由を練り込んでくるのはさすが。ゴッカム読んだ後だと単語がわかってニヤニヤする。鬼木が仲間になった理由が弱いのと、真犯人がこんな理由の為にここまでするのかってなるので感情移入はそこまでできないけれど。まあ、本格は理由をつけるのが存在理由みたいな感じだから仕方ないか。大樹が動く。何度も複数。木を動かす。何度も。東へ。人がいなくなる。人を隠すなら森の中。大型クレーンはまさに力技だな。作者の自然知識すごいな2021/06/20
sken
7
これを読んでハッキリしたんですが、私はいわゆる“本格”モノには向いていないんですねぇ。様々な出来事が起こって、その原因とか方法とか謎をすっきりと解きほぐしてくれる……のは、ありがたいと思うのですが、な〜んか登場する人物がなんというか薄っぺらいように感じられてしまい、特に感想をいうこともないのではと思います。はい。2013/08/13
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