内容説明
何人も書物の類を所有してはならない。もしもそれらを隠し持っていることが判明すれば、隠し場所もろともすべてが灰にされる。僕は書物というものがどんな形をしているのかさえ、よく知らない―。旅を続ける英国人少年のクリスは、小さな町で奇怪な事件に遭遇する。町中の家々に赤い十字架のような印が残され、首なし屍体の目撃情報がもたらされるなか、クリスはミステリを検閲するために育てられた少年エノに出会うが…。書物が駆逐されてゆく世界の中で繰り広げられる、少年たちの探偵物語。メフィスト賞作家の新境地。
著者等紹介
北山猛邦[キタヤマタケクニ]
1979年生まれ。2002年、『「クロック城」殺人事件』で第24回メフィスト賞を受賞してデビュー。機械的トリックの案出に強いこだわりを持つ一方、世紀末的かつ叙情的な独自の作品世界を構築し、若手本格ミステリ作家として将来を期待されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みゆ
67
ほぇ~、こんなミステリありなのか?!異世界?ホラー??ファンタジー??? 終末的な世界でおこる幻想的な事件。焚書により犯罪を考える事・疑うことを忘れた人々は首無し死体が見つかっても「自然死」として淡々と扱う。こんなんでミステリ成立するんかいな?と訝っていたのに、ちゃんとロジックで犯人当てを着地させてくれました。お見事!(。>ω<ノノ゙パチパチ♪2024/12/25
yukision
65
焚書が行われ,ミステリを知らない人たちが住む町。数年前から首なし死体が次々と発見され,同時に家々に謎の印が記される。その町ではでは死が身近にあってはならず,殺人事件があったとしても人々の反応は乏しい。そこで捜査を始めるのが後半ようやく登場するタイトルの少年検閲官エノ。事件の全貌はいかにも北山さんらしい奇想天外なものだったが,それよりも物語全体に漂う不思議な雰囲気が印象深い。2021/10/20
aquamarine
62
焚書により書物が駆逐される時代。旅をしてきた英国人クリスの目で見る情景だからなのか日本のはずなのにどこか西洋のような雰囲気が漂います。序章や間奏による話の流れや「探偵」という言葉の使い方、ガジェットの作成された経緯など本当に読み手を惹きつけるのが上手いと思います。一気にひきこまれて読み進めました。ミステリという概念がない世界というのはこうなるんですね。犯人の見当は意外と簡単につきましたが、死体処置の必然性にはわかったとき鳥肌がたちました。ラストの展開もとても好きでした。続編を読むのが楽しみです。2015/01/13
オーウェン
54
英国からやってきた少年のクリスは、さびれた村で首なし死体が連続する事件に立ち会う。 それは探偵と呼ばれるものの仕業であり、本が禁止の世界ではミステリの定義が通じないのだ、 なぜか検閲官が少年という中で、家の扉には赤いペンキで十字架が。 そして霧の湖の中での首切り事件。 これらに少年検閲官は論理的に蹴りをつける。 そもそも出てくる人物は全員外国名なのに、なぜか舞台が日本。 そのためこのトリックが成立する意味がある。2024/12/09
オフィーリア
51
めちゃくちゃ良い!書物が禁忌とされ焚書された世界でのミステリ。どこか幻想的で静謐な世界が何より美しく、この世界で発生した首切り殺人も幻想的な出来事も全てこの世界にしか存在しないロジックで集束する。世界観よし雰囲気よし真相よしの最高の特殊設定ミステリでした。2024/12/08