内容説明
2052年、イスラエル共和国が消滅して40年。住民の大多数は海外へと逃れ去ったが、イスラエルの文化を後世に残すために『ユダヤ民族記録協会』が設立された。同協会がギュンター・ウォンカー教授に執筆を依頼した自伝が本書である。ギュンター・ウォンカーはイスラエル生まれだが、軍隊時代の経験から激しいアンチ・シオニストとなった。彼はヨーロッパの、とくにドイツの女性を愛し、じきにイスラエルを離れ、富と名声、そして性欲の充足を求めてドイツへ向かう。ほどなくギュンターは有名な哲学教授となり、あらゆる心的事象を窃視者の視点から捉え直す学問“窃視学”の創始者となるのだった。イスラエル出身のミュージシャン作家による哲学/エロ/政治/スラップスティック小説。遂に登場。
著者等紹介
アツモン,ギルアド[アツモン,ギルアド][Atzmon,Gilad]
ミュージシャン。1963年生まれ。イスラエルで育ち、徴兵された経験からアンチ・シオニストとなる。現在はロンドン在住。ジャズ・サクソフォニストとして優れた腕前をもち、自らのバンド、オリエント・ハウス・アンサンブルによるアルバムに『EXILE』がある。1998年から故イアン・デューリーのバックバンド、ブロックヘッズのツアーに参加しているほか、ロバート・ワイアットやサイモン・フィッシャー=ターナーとコラボレーションを行っている
茂木健[モギタケシ]
翻訳家。1959年生まれ
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感想・レビュー
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きゅー
10
老齢を迎えた窃視学の創設者による自伝という体裁で、窃視者(ピーパー)たるものの生き様が語られる。「覗く」というきわめて私的で、犯罪的な行為について物語られるのだが、決してたんに扇情的な小説ではない。のぞき行為という喩えを用いて著者が向かおうとしているのは、世界そのものから隔絶した個々人の姿だ。「テレビをのぞき穴として、国民は他人の苦しみを見物した」とも彼は書いているが、覗く者は覗かれる者との間に関係性を持ち得ない。そこには、ただたんに「覗く」という行為があるだけであって、人間的なつながりは皆無だ。2016/01/08
慧
0
★1/22004/12/27