内容説明
探索が始まったのは一枚の図書請求票と、ある典雅な男性からの慇懃な質問がきっかけだった。「卒爾ながら」男性は、ほんのごくわずかに会釈をしながら言った。「少々お時間を拝借させていただきたいが」ニューヨーク公共図書館に勤める20代の司書アレクサンダーは、ある金持ち老人から時間外の仕事の依頼を受ける。器械仕掛けや稀刊本のコレクションに熱をあげる老人は、蒐集物のひとつである18世紀の「形見函」の空の仕切りに、しかるべき品をおさめたいとの思いに取り憑かれていた。古い伝記を繙くと、その品とはマリー・アントワネット、つまり王妃の依頼を受けて作られた絢爛豪華な懐中時計であるとわかる。盗まれた時計をさがすアレクサンダーを陥れようと、老人が巧みに仕掛けた罠。そして著者が仕掛けた読者をも欺く罠とは。
著者等紹介
カーズワイル,アレン[カーズワイル,アレン][Kurzweil,Allen]
アメリカの作家。1992年に『驚異の発明家の形見函(A Case of Curiosities)』でデビュー、ドイツ、フランス、ロシアなど12か国で出版され、国内外の批評家から絶賛される。1996年、グランタ誌の「アメリカでもっとも有望な若手作家」に選ばれたのもこの作品による。メジャーな賞には縁がなかったものの、エア・リンガス(アイルランドの航空会社)/アイリッシュタイムズ文学賞、メディシス賞(フランス)の候補となった。グッゲンハイム、フルブライト両奨学金を得た経験があり、1999年にはニューヨーク公立図書館の研究員として1年を過ごした。現在はLeon and the Spitting Image(小社近刊)をはじめとするヤングアダルト向けのファンタジイ(3部作)を執筆中。ロードアイランド州プロヴィデンス在住
大島豊[オオシマユタカ]
1955年生まれ。上智大学外国語学部卒
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