内容説明
18世紀、ジャージー島、子爵家の美少女ジュリエットの水浴姿を見てしまったジョンの父は、猟犬にズタズタに噛み殺される。まるでディアナの水浴姿を覗き見たために八つ裂きにされたアクタイオンのように。遺産相続手続きのために、ロンドンに赴いた青年ジョンは、神経症の療法として固有名詞辞典の執筆を始めた。ロンドンの地下に潜む秘密組織“カバラ”とは?かつて航行中に消息を絶った帆船の謎とは?ユグノー弾圧の最終頁ともいえるラ・ロシェルの包囲戦の持つ意味は?暗躍するインド人の殺し屋の正体は?そしてジュリエットとジョンの恋の行方は?壮大な謎に満ちた大バロック歴史小説。サマセット・モーム賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kouro-hou
26
分厚い、しかも二段組み。著者の処女作だそうで、内容は「エーコ+ピンチョン+ディケンズ+007の大バロック歴史小説」と宣伝されているが何か違うw エーコ1割でピンチョン数%、残りは折半くらい?の18世紀欧州のサスペンスドラマ。ギリシア神話固有名詞事典を執筆する主人公が出くわすギリシア神話由来の見立て殺人は、今時大変クラシカルで特に2例目は「こんな死に方はイヤだ&こんな殺し方は金かかりすぎてイヤだ」である意味必見。かなり読みにくく、素材を乱切りして積み上げて五寸釘で縫い止めました、的な勢いがまた魅力ではある。2016/02/27
sabosashi
17
古典オタクのウンチク話かと思えば、すんなりひっくり返される。二段組みで六百頁。おおいに覚悟せし。西インド会社と並ぶ東インド会社の奥へと導かれ、つまりはヨーロッパ近代(の搾取)の歴史へと引きずり込まれる。ミステリー仕掛けでエンタテーナー性も高いので読ませてくれる。でもストーリーが入り組んでいて、じつのところ付いていくのに青息吐息。そりゃ、たしかに東インド会社だったら、このくらいおどろおどろしい話に充ちてはいるだろうと思うが。この話から抜け出せないのでは、とノイローゼ気味にも陥ったしだい(笑)。2023/10/18
shiaruvy
10
【失念】 5回読んでも楽しい! 心の中で5000Yenの減価償却は終わったと思い込む! コメントあとから 2015/05/06
ykshzk(虎猫図案房)
8
登場人物の多さでは人生で読んだ本の中で一番かもしれない。情報量の多さも一番か。エーコ+ピンチョン+ディケンズ+007!との謳い文句がそでにあったけれど、どれか一つで私には十分。途中で物語に置いてけぼりをくらい、主人公のランプリエール(彼は実在する、固有名詞辞典を作成した古典学者)の登場シーンを頼りに、読み始めた意地のみで読了。秘密結社・貿易関係に興味のある人、ギリシャ神話に造詣の深い人ならもっと楽しめるに違い無く、きっとドキドキのサスペンスなのだろう。知識のひけらかしかと感じてしまう自分の無学さを痛感。 2020/06/17
mejiro
7
謎の美少女、秘密結社、不気味な殺人、冒険活劇など、全体的にハリウッド映画のようなノリで、どうりで既視感があると思った。街中の臨場感は映画のワンシーンみたい。ストーリーや登場人物は平凡で目新しさはない。手の込んだ偽装をする一方で人目を引く殺人を犯したり、秘密結社はなにがしたいのか、と困惑する。主人公が辞書を編纂した本当の理由が拍子抜け。神話や歴史に関する部分には興味を引くものがあったけど、物語としての魅力は感じなかった。分量のわりにカタルシスがなくて脱力した。小道具や細部を楽しむ小説なのかも。2018/04/14