海外文学セレクション<br> 死者の百科事典

  • ポイントキャンペーン

海外文学セレクション
死者の百科事典

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 192p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784488016258
  • NDC分類 989.23
  • Cコード C0097

内容説明

世界20か国語以上に翻訳されているユーゴスラビアの作家ダニロ・キシュ。本書は、抒情にみちた淡い水彩画のような自伝的連作短編集『若き日の哀しみ』で、日本の読者を魅了した彼の、皮肉な味わいをもそなえた幻想的な作品集である。旅先で訪れた図書館で、世界中のあらゆる無名の死者の生涯を記録した書物を見出し読み耽るという不思議な表題作をはじめ、音楽的手法、絵画的手法、映画的手法と、自在に変化するスタイルで描かれた、どれもが死と愛をテーマとする九つの物語からは、虚無の闇を見つめるキシュの声が聞こえてくるはずだ。アンドリッチ賞受賞作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

51
死と、死後の名誉や伝説についての9つの短編。作者の目は、何と皮肉に死を巡る人の欺瞞を暴くことか。無名の人物を記録した『死者の百科事典』の中の父の項を、「父の生涯は無駄ではなかった」という証拠としたいと言う表題作の語り手。でも壮麗な葬儀が営まれた「彼女の面影」が「たちまち消えて」しまう『死後の名誉』も、ある本が歪められ屈折し変転していくさまを追った『王と愚者の書』も、人やその残したものの儚さ虚しさを伝えるばかり。「確かなものは、死だけ」なのか。ただ、作者の見つめるその暗い虚空は不思議なほど魅力的なのですが。2019/06/07

sk4

48
『源頼朝:1192年に征夷大将軍になる。鎌倉幕府を構築した人物』ってぐらいしか教科書には書いてないけど、きっとこの人は私などよりもはるかに激動の人生を送ったはず。 生きた者同士でもひとたび出会えば、自分と相手の人生の歴史を共有することで、世界は少なくとも二倍に広がる。 亡くなった父の人生が克明に記録されている【死者の百科事典】。 それは父しか知り得ない彼の人生を照らす光を送る窓。 「人生は要約できない」伊坂幸太郎が『モダンタイムス』で叫んだメッセージを思い出す。 親ともっと話がしたくなった。2014/03/01

藤月はな(灯れ松明の火)

37
全体的に全てを虚無へと帰す死の気配が漂う短篇集。『魔術師シモン』の奇跡の後の悍ましさにはその肉体の現実性があるが、『眠れる者達の伝説』は死せる者達の死せる眠りが出会った人々に逃亡をさせずにはいられないという記述に不気味な何かを感じます。特に人間の尊厳を突き詰めた『祖国のために死ぬことは名誉』は逸品です。2013/09/24

zirou1984

34
ユーゴスラビア出身の作家による、国も時代も文体も飛び越えて、史実と虚構を入り混ぜた9+1つの短編集。文化的背景も語りの形式も作品毎に変えてきているため難解な箇所も幾つか見受けられるのだが、比較的シンプルに語られる表題作が素晴らしい。語られなかったものたちの人生について集められた図書館という世界を円環的に描きながら、時代と個人を重ね合わせていく。どの短編にも歴史と死の匂いがこびり付いており、言葉によってその深淵へと潜り込んでいこうとする緊張感があり、圧縮した幻想を現像するかのような読書感を味わえる。2018/01/25

ネムル

24
国の歴史を俯瞰的に眺める視点と、個人の人生の細部をも深く掘り下げる視点。「生と死」のもつ虚無を様々な視点と手法から鋭く見据える筆致が、ボルヘス的な想像力に支えられた表題作が誠に素晴らしい。また、無駄を排した硬筆で詩的な文体が抒情性を帯びてくる「死後の栄誉」「赤いレーニン切手」も妙に蟲惑的。2009/06/30

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/508275
  • ご注意事項

最近チェックした商品