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出版社内容情報
ミロラド・パヴィチ[ミロラドパヴィチ]
著・文・その他
青木純子[アオキジュンコ]
翻訳
内容説明
美しい娘ヘーローを愛した青年レアンドロスは、蝋燭の灯をたよりに彼女の許へと毎晩、海峡を泳ぎ渡った。ある夜、ヘーローの兄が船で海に出て蝋燭の灯で青年を沖へとおびき出し溺死させてしまう。古代ギリシアの悲恋物語の主人公二人は、『バザール事典』のパヴィチの手によって、現代の化学専攻の女子大生ヘーローと、17世紀の青年石工レアンドロスに生まれ変わる。二人の男女を隔てるのは、青い海ではなく、時間の海なのだろうか。鬼才パヴィチが次々に投げかける詩的謎の数々…。この本は両側から読み始められます。あなたはどちらの側からこの謎に満ちた小説に挑まれますか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペグ
60
本の両側から物語が二編。最初に17世紀、石工レアンドロスの冒険物語を読んでから20世紀、女子大生ヘーローのお話を読んだので、わたしにはとても納得出来る1冊に仕上がった。そして3、4歳の頃母の手作りの人形に自分でつけた名前はレノア、シノア、コショベ。この本に出てくる名前達は、ミリコ、スボタ、ラダチャなど何故か愛着を感じ。昔から憧れていたのは東欧。フィクションなのに何故か納得したわたし。魅力的な題名は内容も不思議な魅力に溢れていて再読予定です。 2018/03/11
臨床心理士 いるかくん
37
旧ユーゴスラビア出身のセルビア人作家、ミロラド・パヴィッチの時空を超えた幻想譚。ギリシャ神話の挿話である「へ―ローとレアンドロス」の悲劇的結末を迎えた恋愛を題材に採った奇想溢れる物語。この本は2篇から成り、2篇で一つの作品となっており、両面が表紙となっておりどちらから読んでもよいことになっている。著者の仕掛けた罠にいつの間にか取り込まれてしまい、読み終わった後しばらくの間、眩惑されたままである。2014/10/30
スミス市松
21
ひっくりかえすと裏側からもうひとつの物語が流れ出す砂時計のような小説。本書は同名のギリシア神話の変奏だが二十世紀の女子大生ヘーローと十七世紀の石工レアンドロスの物語はそれぞれ完全に独立してあり、二人の時を越えた邂逅みたいなある種のカタルシスは期待できない。しかし本書をくるくる回しながら読んでいくと、なぜか不思議とお互いの物語が繋がっていることが感じられる。物語を彩る様々なモチーフが風の裏側を通って時に共有され、交換されることで、読者は海の向こうの物語なしにはいまこの物語も成立しえないことに気づくのである。2012/03/24
秋良
13
再読。今回はレアンドロス側から読んでみた。2回目でも、表側と裏側どっちから読んでもいい構成はつくづく変態だと思う。内容はすっかり忘れてたけど(ヘーローが家庭教師することだけ覚えてた)、レアンドロス側から読んだ方が二人の運命に共通する事象が見つけやすかった気がする。作中で占い師の言った「嵐の時も風の裏側は乾いている」ように、悲恋をベースにしていてもどこかドライな不思議な読後感。ミロラド・パヴィチ、変態だなあ!2025/09/19
秋良
12
どちらも表で、上下を逆にして読み進めていく奇書。ヘーロー→レアンドロス→ヘーローで読んでみた。17世紀と20世紀が、時を隔ててθのように存在している。雨の中を吹き抜けても乾いている風の裏側は、別の時空に接しているのかな。2018/07/08
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