海外文学セレクション<br> 夢宮殿

海外文学セレクション
夢宮殿

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  • サイズ B6判/ページ数 238p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784488016005
  • NDC分類 993.4
  • Cコード C0097

内容説明

〈夢宮殿〉、それは帝国中の臣民が見た夢を集め、選別し、解釈する調査機関だった。毎週金曜日には、帝国と君主の運命に関わる〈新夢〉が皇帝のもとに提出されるのだが…アルバニアの鬼才が描く迷宮の現代文学。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

内島菫

27
どことなくぎこちない訳文は、フランス語の翻訳からの翻訳だからか、元のアルバニア語がそうなのか。夢の選別や解釈という仕事は、国家を揺るがすほどの重要事項に関わるものでありながら、どうにでも操作できる恣意性の高さ故、その地に足がつかない宙ぶらりんのストレスには出口がない。眠りと死の間に架かる橋のような存在である夢が集まる夢宮殿のブラックホール的な不安に、夢に橋として現れるキョプリュリュ家の一員である主人公が絡め取られていくのも自然な流れなのだろう。本質などないという点で私達と夢宮殿の職員の仕事はよく似ている。2016/10/14

ネムル

14
国民の見る夢を管理し、国の行く末を先読みしようとする《夢宮殿》と、そこで働く男の悪夢的な日常を描いた作品。アルバニアの血生臭い歴史と、国民がそこに奇妙な形で介入する迷宮的な機関が、作品にアイロニカルな凄みを与えている。東欧文学とかが好きなら必読。2009/05/06

きりぱい

8
これは面白い。夢宮殿なのに甘美でもきらびやかでもない。そこでなされるのは、集めた夢から国家の安危に関わる予兆を読みとるという、まるで夢判断のような仕事。迷路のような構造の管理組織なのに、かき集められる夢は申告制であるところが可笑しく、正直に申告してもねつ造しても、どの道引っ立てられたらアウトなのが怖い。働く側も国家に関わることだけに、見落とさず通じすぎず、解釈のさじ加減に注意しないと危険。これは怖いわ~と笑えるところもありながら、現実ではあながち皮肉ではすまない社会主義の体現だとも思うと何とも怖ろしい。2012/02/28

sayan

6
トランプ政権になってから俄然注目を集めるようになった「1984(ジョージ・オーウェル)」。どこで知りえたか、全体主義体制を紹介する小説のなかに、「夢宮殿」も名前だけ紹介されていた。東欧小説はこれが初めて。確かに1984に似ている部分もあるが、個人的にはある意味予知「夢」を管理するところなど、「マイノリティレポート」とを髣髴させた。陰鬱なストーリー展開だが、どこか洗練されているのは他の書評にあるとおり。著者の他の作品も読んでみたいと思う。2017/05/27

オオトリちゃん

5
国民が見た夢の内容を分類し、解釈し吟味して国の存亡に関わる夢を選別する謎の機関。無意識領域下の世界を支配する構造か。オーウェルの管理社会の様な、徹底して人間性を剥奪する暴力こそないが、カフカ的な寓意性や不条理が紡ぐ夢現の世界に出口を見失ってしまう。徐々に現実認識を狂わされていくようで、その奇妙な酩酊感がたまらない。まぁ後半のアルバニアの風土や土着性を描くには、夢の収集や保管といった夢幻的な怪異が必要だったのだろうと思う。オスマン帝国の侵攻から続く血塗られた歴史、民族の宿命性は決して<夢>の話ではないのだ。2015/12/12

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