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内容説明
かつて実在し、その後歴史上から姿を消したバザール族。この謎の民族に関する事典の新版という形をとった前代未聞の事典小説。キリスト教、イスラーム教、ユダヤ教の交錯する45項目は、どれもが類まれな奇想と抒情と幻想に彩られ、五十音順に読むもよし、関連項目をとびとびに拾うもよし、寝る前にたまたま開いた項目一つを楽しむもよし、完読は決して求められていないのです。失われたバザール語で歌う鸚鵡、悪魔に性を奪われた王女、時間の卵を生むニワトリ、他人の夢に出入りする夢の狩人…。オーソドックスな物語文学の楽しみを見事なまでに備えながら、その読み方は読者の数だけあるという、バルカンから現われた魅惑に満ちた(21世紀の小説)。本書には男性版・女性版の2版があります。旧ユーゴスラビアNIN賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おおた
19
9世紀のハザール健在時、16世紀の夢を追い求める人々、そして現代のハザール研究者にまつわる3つの時間軸が舞台。ハザール王国はイスラームに属する民衆を抱えながら国ごとユダヤ教に改宗して崩壊してしまうという、破天荒な国。事典という形で描くことで、それぞれの項目が次第にハザールという奇妙な国と、それにまつわる人・人外の関連を浮かび上がらせて、あたかもハザールの研究者になったような酩酊感。架空の歴史書にのめり込むなんて何の生産性もないけれど、これほど楽しいこともないと断言できるおもしろさ。2013/09/22
春ドーナツ
18
「かつて実在し、その後歴史上から姿を消したハザール族。この謎の民族に関する事典の新版という形をとった前代未聞の事典小説。キリスト教、イスラーム教、ユダヤ教の交錯する45項目は、どれもが類まれな奇想と抒情と幻想に彩られ」(Amazonの商品の説明より抜粋)ちょっとだけ清水義範さんのパスティーシュものを思い出した。神羅万象と東ヨーロッパ風味が織りなされた巨大タペストリーをソファーに座ってじぃっと眺めているような読書だった。視界がにじんできて、錯覚や裸眼立体視が生じることも。栞紐が赤緑黄3本あったけど順に読む。2020/09/20
misui
16
主人公が突然虫になったり口から兎を吐き出したりと、世に幻想文学と呼ばれるものは数あれど、そこには書かれたことの圏域から逃れられないというある種の限界がある。どんな奇想を盛り込んでも結局は想像力の高さ比べでしかないなどと嘯けば行き詰まるのは必然で、そうした限界の向こうに本当の幻想があるのだけれど、なかなか触れられる機会は少ない。本書は事典小説という特殊な形式を用いて限界の向こうを示唆する作品であり、項目と項目が呼び交わし互いに打ち消すことで、読者が想像によって能動的に幻想を引き出せるよう作られている。2013/09/17
つるら@turulaJB
4
不思議な本だった・・・
酔花
1
ミステリでありSFでありファンタジーであり純文学でもあり、まさに奇書と呼ぶにふさわしい一冊。普通に最初から順に読んでいったが、索引からたどって読むのも楽しいだろうな。2012/01/16