出版社内容情報
弁護士の「私」が遭遇した11の異様な“犯罪”。実際に起こった事件を元に、胸を打つ悲喜劇を描いた圧巻の連作犯罪文学。数々の文学賞を獲得しベストセラーとなった傑作!
内容説明
一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の息子。羊の目を恐れ、眼球をくり抜き続ける伯爵家の御曹司。彫像『棘を抜く少年』の棘に取り憑かれた博物館警備員。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。―魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。高名な刑事事件弁護士である著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの哀しさ、愛おしさを鮮やかに描きあげた珠玉の連作短篇集。ドイツでの発行部数四十五万部、世界三十二か国で翻訳、クライスト賞はじめ、数々の文学賞を受賞した圧巻の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
545
シーラッハのデビュー作。11の短篇を収録。配列に意図があるのかどうかはわからないが、結果的には見事な構成となっている。冒頭の「フェーナー氏」は生きて行くことの哀しみを、そして巻末の「エチオピアの男」は歓びを語る。小説はいずれも刑事弁護士である著者の経験から脚色されたものだろう。文体は極力感情を排し、事実のみに淡々と語らせて行く手法。それはそのままドイツにおける裁判のあり方をも反映したものであると思われる。そして、それは法治国家ドイツの理想とするところでもある。それを顕著に反映するのが例えば「正当防衛」だ。2017/08/05
財布にジャック
138
作者が弁護士だからなのか、犯罪を犯した人々を描いているのですが、なんだか救いの感じられるお話が多いと感じました。しかし、リアルでグロテスクな描写の部分は、実話に基づいているようなので、どんなミステリーを読むよりもある意味ぞっとさせられました。11ある短編の中でも、特にトップの「フェーナー氏」とラストの「エチオピアの男」が印象的でした。また「緑」や「棘」も不思議なお話で味わい深いものがありました。「ドイツで大ベストセラー」の看板に偽りのない素敵な本に出合えました。2012/01/10
さと
121
素晴らしい。弁護士でもある著者が実際の事件を題材に綴った短編集。感情を排除した語りが重さを感じさせず、感動や同情とともに読ませようとする意図がないのがいい。それでいてこんなにじわじわと心に沁みてくるとは感動的。化学調味料でうまく味付けされたものではなく素材の味をそのままにいかした料理といった感じ。人の心が生んだ犯罪ではあるが、一本の木を引き抜いた時複雑に絡み合った根が姿を現すように一件の事件にも罪を犯した人、関わった人たちの哀しみや苦しみ、愛が複雑に絡む。2014/12/31
ナイスネイチャ
121
図書館本。本屋大賞翻訳部門受賞していたので。実話を元に弁護士から見た色々な犯罪を犯した人の哀しさや切なさを描いた短編集。ちょっと自分には合わなかったかな~。最後の「エチオピアの男」は良かったけど。続編は遠慮します。2014/08/13
吉田あや
110
シーラッハ短篇集第三弾の刊行に向けて、過去2冊を再読しながらシーラッハ熱を盛り上げていこうと久しぶりに読んでみると、一度目よりも更に惹き込まれながら読了。多少の忘却はありつつも、矢張り本は読めば読む程面白さが増すことを実感。弁護士として実際の事件に数多く関わってきたシーラッハだけに、派手な仕掛けはなくとも、リアルな感情と共に読者を事件のなかに巻き込んでいく。そして酒寄さんは静寂の光景を訳す文章力が凄いと改めて感嘆。(続↓)2019/04/19




