出版社内容情報
ストリートフォトの頂点に立つエルスケンの幻の処女作が,40余年の時を経て完全復刻。多くの写真家の原点となった本書は,時代を超えて今なお新しく,力強い魅力を放つ。
感想・レビュー
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まさむ♪ね
55
セーヌ川の左岸、サン=ジェルマン=デ=プレの恋。それはパリの街というきらびやかな響きとは無縁の、ざらついた刑務所の壁のように冷ややかで無機質な恋。煙草とハシシとコニャックと、夜通し奏でられるジャズの調べ。恍惚の表情を浮かべて歌うフレディのもの悲しい歌が今夜も空きっ腹にしみわたる。想像以上に猥雑で刹那的なモノクロームの舞台で踊るオレンジ髪の女。孤独の闇をさまよう女。男を狩る獣のような女。目の下にクマのあるグロテスクな一角獣はさよならも言わず、灯火のきらめくサン=ジェルマン=デ=プレの闇夜に消えていった。2016/11/18