出版社内容情報
優雅に宮廷サロンを飾ったバロックから,構成美を極めた古典派,芸術家の内面を紡ぐロマン派へと,ひとつのジャンルがたどった運命を,愛情をこめて描く初めての室内楽史。
内容説明
宮廷の私室から生まれ、人間の精神を表す小宇宙にまで成長を遂げた室内楽の歴史。
目次
第1章 生気と思考の自由さ、彫琢と芸術(わざ)
第2章 雅びな響きと知的な仕掛け―バロックの世界
第3章 仮象の世界から現実の世界へ―バロックから古典派へ
第4章 精神の愉悦と内面の凝視―ヴィーン古典派の室内楽
第5章 見果てぬ夢―古典派からロマン派へ
第6章 愛と夢と憧憬とほの暗き情念の世界―ロマン派の室内楽
第7章 エスプリとクラルテ―フランス近代の室内楽
第8章 民族的感情の集約的表明―国民楽派の室内楽
第9章 混沌から新秩序へ―十九世紀末から新世紀へ
第10章 現代の諸相
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みかん
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室内楽は、大衆の関心が向きやすい管弦楽曲などと比べて、作曲者も鑑賞者も練度の高さが問われるものの、個人の思想がいちばん先鋭に反映される…ということは常に今後も念頭に置いておきたい2022/02/27
Eu
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様式の先行きが真っ暗なとき、実験の場として機能するのが、音楽の中では小規模で重要性の低い(とされがちな)室内楽の分野だというのが、絵画における静物画の立ち位置と似ているように感じた。E.ラングミュア『静物画』、N.Bryson『Looking at the Overlooked』と併読。 あと表紙すごい。裏に反転図版をカラーで刷ったのが表にぼんやり透ける。レイヤーの芸術である油絵作品を裏から透かして見る倒錯。しかも図版はフェルメールで、絵の中に既に周到な光がある。あまりにもよくできすぎている。装丁金子裕。2020/03/08