出版社内容情報
《訳者あとがき》より
『アンナ・カレーニナ』が世に現われて百有余年、その間どれほどの人々がどれほどの思いでそれを読んで来たことであろう! どれだけの涙がアンナのために流され、どれだけの人がレーウィンと共に信仰を求めて悩んだであろう! モナ・リザの微笑にも似た謎を湛えて我々においでおいでをするこの作品、晩年の漱石をして《これほど偉大な小説は未だかつて読んだ事はない》と嘆ぜしめたこの作品、もはや世界人類共通の所有に属するこの作品を、なるべく大勢の日本の読者に結び合わせる役割を、私の拙い翻訳が些かでも果たし得るならば、喜びこれに過ぐるものはないと思う。(一九七九年八月)