内容説明
小説とは世界の縮図であり、時代の鏡である。近代文学の古典的な名作から、現代の先鋭的な短編小説まで、バラエティに富んだ22編を収録。高校生のための小説アンソロジー決定版!
著者等紹介
紅野謙介[コウノケンスケ]
日本大学
清水良典[シミズヨシノリ]
愛知淑徳大学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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袖崎いたる
12
まさにエッセンスである。予てより気になっていた作家や新たに気に入った作家を見出すのに丁度いい体裁の一冊。主に好ましかったのは大江健三郎さんと高橋源一郎さんの二人。前者は小説以外の文章調子で苦手意識があったのだが、この本に摘出された小説を読んで「まさに文学!」という人間的交通が描かれていて、すっかり誘惑された。後者では以前から聞こえていたポップ文学というジャンルであり、古今東西の既成の童話作品などの参照によって、物語内存在の実存(おかしな表現だけれど)の哀しさと寂しさを描いていて興味深かった。2015/10/14
きつね
10
なかなか面白いチョイスです。高校で使おうとするとややレベル高めかもしれませんが、論じがいはあるはずです。大江、高橋源一郎、津島佑子、谷崎あたりは使ってみたい。漱石の「それから」もピンポイントでいいシーンが選んであります。円地文子は古典と被る題材をわざわざもう一度扱う意味を積極的に強調しないと授業として成立させるのは難しいかも。その点でちょっと解説が物足りない。ガルシア=マルケスはテクスト単体でよむというより、社会的な文脈ありきになってしまうのでこれも授業として構成するのが工夫が必要そう。以下目次。 い2014/02/16
void
6
【★★★★☆】背景知識がないと苦しい設問も一部あるが、明治文豪から現代作家、翻訳はガルシア=マルケス「最近のある日」とオーウェル「絞首刑」まで幅広い。『評論選』もそうだが、他の学参と違い各々が分量たっぷりめなので読書用にもなる(入試問題の2~3倍くらい)。オーウェル、高橋源一郎「さよならクリストファー・ロビン」津村記久子「ブラックボックス」が楽しかった。2014/08/03
カラス
2
アンソロとして購入。印象に残ったのは普請中と海と夕焼け、特に海と夕焼けの問題意識は深く刺さるものがあり、この本の中でもっとも印象に残った。普請中はヒロインが可愛くてよい。この二編以外の作品はほとんど印象に残らず、いまいちだった。入門の方もそうだったけど、全体的にジャンルに偏りがあるのが難点。 あと、やはりこの本でも感じたが、小説の読みどころを大まじめに解説するのはなんだか野暮な感じがしてしまった。2020/02/13
mikimikimini
1
いしいしんじ『ミケーネ』、芥川龍之介『ピアノ』、樋口一葉『わかれ道』、など22作品収録。「高校生のための」とありますが、読み応えがありました。各作品にはいくつかの設問も設けられており、解答と解説が別冊に掲載されています。作家についての背景知識や、小説の解釈など「なるほど」と思うところも多くありました。また、コラムの「新しい小説を読むことによって、私たちもまた人間観や世界観を更新することができるのである。小説と人生は、こうして互いを写し合う鏡のように共生していく。」という言葉がとても印象に残りました。2014/08/29