内容説明
開国と国家建設をめぐる激動の時期に、自我と自我を超えた歴史的現実との対立・相剋を描いた「忠誠と反逆」をはじめ、これまで入手困難であった、幕末から明治初期を扱う思想史の諸論稿を集成。近世を対象にした『日本政治思想史研究』に続く、幕末・維新の思想史。「歴史意識の『古層』」ほか、を付す。
目次
忠誠と反逆
幕末における視座の変革―佐久間象山の場合
開国
近代日本思想史における国家理性の問題
日本思想史における問答体の系譜―中江兆民『三酔人経論問答』の位置づけ
福沢・岡倉・内村―西欧化と知識人
歴史意識の「古層」
思想史の考え方について―類型・範囲・対象
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイキ
2
「家系の無窮な連続ということが、われわれの生活意識のなかで占める比重は、現代ではもはや到底昔日の談ではない。しかも経験的な人間行動・社会関係を律する見えざる「道理の感覚」が拘束力を著しく喪失したとき、もともと歴史的相対主義の繁茂に有利なわれわれの土壌は、「なりゆき」の流動性と「つぎつぎ」の推移との底知れない泥沼に化するかもしれない。現に、「いま」の感覚はあらゆる「理念」への錨づけからとき放たれて、うつろい行く瞬間の享受としてだけ、宣命のいう「中今」への讃歌がひびきづけている」(『歴史意識の「古層」』)2025/03/22
K_1
0
個人的に東アジア憲法を学ぶ上で抵抗権と易姓革命との思想が気になったために「忠誠と反逆」(60年)を再読。三度目になるが、やはり難しく感じた。丸山講義録第四冊三章(64年)・第五冊二章(65年)をあわせて読んだ。大化の改新、武家政権の創立(鎌倉期)、朝廷を抑制した武家政権(江戸期)、大日本帝国、戦後日本・・、「革命」の思想と「抵抗」と「反逆」の発想は時の経過と共に如何なるかを見切る丸山の慧眼は驚異的。通底する思想的問題を丸山は提起するが、僕らはまるで手を付けられないでいるのを痛感する次第である。2012/06/11
junkoda
0
幕末から人間は進歩しているのか。「西洋企業は義よりも利を尊ぶが、夷狄なればさもありなん」「日本企業は義と恥とを第一に仕候」という意味のことを言う人は今もいそう。2009/06/15