内容説明
エリザベート・バダンテールは、女性の野心という問題を、18世紀に生きた二人の偉大な女性の運命にしぼりこむ。一人はシャトレ夫人。ヴォルテールの伴侶で、ニュートンの大作を翻訳し、同時代の知識人たちと対等の立場に立った。もう一人はデピネ夫人。グリムの愛人で、新しい教育論を構想し、ルソーを批判、未来の母親たちの運命を描き出した。この特権的な二人の生涯から、私たちはどんな教訓を受けとるだろうか?これは、18世紀の真只中に私たちを連れて行ってくれる本であるとともに、もっとも今日的なことを見失なうことのない本である。
目次
序章 18世紀における女性の野心
第1章 女性はいかにして野心を抱くようになるか
第2章 まず《私》を
第3章 何が野心を決定するか
第4章 心と精神の永遠の絆
第5章 エミリーの成功
第6章 ルイーズの解放
第7章 女性の野心の限界
結論 過去と現在
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
23
ヴォルテールの恋人でありニュートンの著作の仏訳を手掛けたシャトレ夫人と、ルソーの友人で教育論を著したデピネ夫人。多言語を操り、男の領分とされてきた科学研究に没頭する前者と、その当時常識外とされていた母親自身による育児を通して、ルソーの描く従属的な女性像に反発しつつ、男性に支配されない自立した女性像を目指す後者は対照的だが、現代の女性にとっては、どちらかではなく、どちらも実現する可能性が与えられている、という結論は、何冊か著者の本を読んだ者にとってまことに彼女らしい、女性に無限の期待を寄せるものであった。2025/04/02