斜め論―空間の病理学

電子版価格
¥2,200
  • 電子版あり

斜め論―空間の病理学

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 46判/ページ数 320p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784480843333
  • NDC分類 493.71
  • Cコード C0095

出版社内容情報

ケアは、どうひらかれたのか?

「生き延び」と「当事者」の時代へと至る「心」の議論の変遷を跡付ける。

垂直から水平、そして斜めへ。時代を画する、著者の新たな代表作!



===

「現代は、ケア論の隆盛に代表されるように、人と人との水平的なつながりの重要性をいうことがスタンダードになった時代である。けれども、単に水平的であればよいわけではない。

 水平方向は、人々を水平(よこならび)にしてしまう平準化を導いてしまうからだ。けれども、水平方向には日常を捉え直し、そこからちょっとした垂直方向の突出を可能にする契機もまた伏在している。ゆえに、垂直方向の特権化を批判しつつ、しかし現代的な水平方向の重視に完全に乗るわけでもなく、「斜め」を目指すこと……。

 そのような弁証法的な思考を、精神科臨床、心理臨床、当事者研究、制度論的精神療法、ハイデガー、オープンダイアローグ、依存症といったテーマに即して展開したのが本書のすべてである。」

(あとがきより抜粋)

===



自己実現や乗り越えること、あるいは精神分析による自己の掘り下げを特徴とする「垂直」方向と、自助グループや居場所型デイケアなど、隣人とかかわっていくことを重視する「水平」方向。

20世紀が「垂直」の世紀だとすれば、今世紀は「水平」、そしてそこに「ちょっとした垂直性」を加えた「斜め」へと、パラダイムがシフトしていく時代と言える。

本書は、ビンスワンガー、中井久夫、上野千鶴子、信田さよ子、当事者研究、ガタリ、ウリ、ラカン、ハイデガーらの議論をもとに、精神病理学とそれにかかわる人間観の変遷を跡付け、「斜め」の理論をひらいていこうとする試みである。



著者は、2015年のデビュー作『人はみな妄想する』でラカン像を刷新し、國分功一郎、千葉雅也の両氏に絶賛された気鋭の精神医学者。デビューから10年、新たな代表作がここに誕生する。


【目次】

第一章 水平方向の精神病理学に向けて──ビンスワンガーについて

第二章 臨床の臨界期、政治の臨界期──中井久夫について

第三章 「生き延び」の誕生──上野千鶴子と信田さよ子

第四章 当事者研究の政治

第五章 「自治」する病院──ガタリ、ウリ、そしてラカン

第六章 ハイデガーを水平化する──『存在と時間』における「依存忘却」について

補論1 精神分析とオープンダイアローグ

補論2 依存症臨床の空間──平準化に抗するために

内容説明

空間の病理学。ビンスワンガー、中井久夫、上野千鶴子、信田さよ子、当事者研究、ガタリ、ウリ、ラカン、ハイデガーらの議論をもとに、「生き延びと当事者の時代」へと至る「心」の議論の変遷を跡付ける。ケアは、どうひらかれたのか?垂直から水平、そして斜めへ。時代を画する、著者の新たな代表作。

目次

第一章 水平方向の精神病理学に向けて―ビンスワンガーについて
第二章 臨床の臨界期、政治の臨界期―中井久夫について
第三章 「生き延び」の誕生―上野千鶴子と信田さよ子
第四章 当事者研究の政治
第五章 「自治」する病院―ガタリ、ウリ、そしてラカン
第六章 ハイデガーを水平化する―『存在と時間』における「依存忘却」について
補論1 精神分析とオープンダイアローグ
補論2 依存症臨床の空間―平準化に抗するために

著者等紹介

松本卓也[マツモトタクヤ]
1983年、高知県生まれ。2008年3月、高知大学医学部医学科卒業。2015年3月、自治医科大学大学院医学研究科修了、博士(医学)。2016年4月より、京都大学大学院人間・環境学研究科総合人間学部准教授。専門は、精神病理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 1件/全1件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

みき

5
ケアは「深層心理を探る」と言う言葉にあるように、もともとは垂直性を重要視してきた。ここに近年自助グループや当事者研究などの水平方向からのアプローチが現れた。作者はこれをハイデガー主義になぞらえて、現存在の本来的な生き方ではなく、非本来的な生き方が生き延びる方法と注目する。水平方向での他者とのコミュニケーションは、一つの語りであってもそれを聞いている人々全員に同じものを想起させ、ポリフォニーとなる。このポリフォニーが水平方向を垂直方向へと向かわせる。この均衡状態が「斜め横断性」であり、近年注目されるケアだ。2025/09/26

kangetsu

2
垂直方向の関係から水平方向の関係へ。しかし、ちょっとした垂直方向の契機を保つ「斜め」の思想。垂直方向の特権化と、水平方向の平準化にともに抗するあり方は、あらゆる組織論においても成り立つ考え方ではないか。2025/08/26

キャラ

2
事物が目的に応じた有用性から働きかけ、それに了解し企投することで自己を定位するハイデガーの論(著者は初期のころを特に言っている?)では、自己の獲得、保存の前提が強い。それでは個がどこまでも際立つ論理で、他者に自己を開くような、共時的な空間はできないという。そこで、頽廃とされていた水平方向による被投性の追究をはじめ、依存を引き受けられるよう、責任や問題を外在化できる環境を共有し、当事者(ニーズ)を見いだす。そして共同体の隣人として、”なにに”ついて共に経験し同じ知覚の場を構成すること、それがケアなのだそう。2025/08/14

シン

1
あらゆる箇所にドゥルーズが棲みついていることが気になった(ここまで評価してることを知らなかった)2025/08/12

池波

1
発売日に購入し、8/9昼にかけて1〜4章を読み、8/9に京都で筆者と國分功一郎氏との対談イベントに参加し、翌日5章〜補論2を読んだ。対談から読了の隙間、人との会話の中で「小説を書くには他者を書けるようになる必要がある」旨の意見に触れた。他者を書くということを「自分以外の目から世界がどう見えているかを書くこと」だとすると本書の議論はそこへの接続端子も持っているように思った。フッサールのあたりとか特に。「統合失調症」という強い言葉に自分の状態を引き寄せたい誘惑に駆られつつ、回復の方途を手に入れた気持ちで、安堵2025/08/10

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/22762918
  • ご注意事項

最近チェックした商品