内容説明
宗教学の第一人者が、天皇制と近代日本の連環をえがき、皇統に内在する神話的な力を読み解く。この国で生きるなら、知っておきたい歴史がここにある!
目次
第1章 神国日本から神聖天皇へ―古代の源泉と近代の構築
第2章 祭政教一致の明治―天皇崇拝が国家の柱になった
第3章 天皇の軍隊―国軍と靖国神社の創建
第4章 聖徳と慈恵―皇室に頼る福祉と天皇・皇后讃仰
第5章 群衆と治安と天皇崇敬
第6章 天皇崇敬による全体主義的動員への道程
第7章 象徴天皇と神聖天皇の相克
著者等紹介
島薗進[シマゾノススム]
1948年生まれ。宗教学者。東京大学大学院人文社会研究科名誉教授。上智大学神学部特任教授、グリーフケア研究所所長。専門は日本宗教史。日本宗教学会元会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やまやま
12
あとがきによると、久野収の「日本の超国家主義」(現代日本の思想:岩波新書)に述べられる顕教としての絶対君主制と密教としての立憲君主制という比喩、その2つの戦前史における顕教による密教征伐という比喩が忘れ難く、比喩の卓越ぶりを自分なりに説明したかったという種明かしがあります。日本国統治のために「宗教」としての天皇制を賛美するのは、プロパガンダとして大衆層向けのものもあれば、知識エリート層の内部卓越が実相ではと思われる事象もあり、日本史上の事実をよく拾っていると感じました。写真が多いのは良い点です。2021/10/17
mittsko
6
熟読した…(*'▽') まさにこの歴史が知りたかった、痒い所に手が届いた、ありがとうございます。天皇の神聖性、もしくは「神聖天皇崇敬」が、日本において、どれぐらいのスパンの歴史のなかで、どこのどの立場の誰によって築かれてき、そしていよいよ庶民にまで流布浸透させられてきたか… この点の理解こそ「日本社会の基軸」をよく見るのに不可欠だ、という著者の主張に全面賛同します。この分野では、今後第一の基本図書になっていく一冊と思われます。とても読みやすいので、すこしでも関心に引っかかった方は、ぜひとも読まれたし!2019/06/09
非実在の構想
2
顕教としての天皇絶対主義と密教としての立憲主義。国民を統制するため天皇絶対主義を浸透させるも、染まりきった国民により逆に政府が動かされる事態となって、密教が討伐されてしまう。精神主義全体主義の基点を乃木希典においているのが興味深かった。2019/05/09