出版社内容情報
ゲーテという作家の視線の届く時間・空間の広大さを追い究めてきたドイツ文学者・作家が、その無限の射程に迫る。文学を読むことを根源から問うゲーテ論。
内容説明
ゲーテが見た世界の果てしなさ、謎の深さと美しさ―敗戦世代の文学者が描くゲーテの肖像。暗く沈黙するゲーテと生を享受しようと宇宙を快活に歩むゲーテ―複雑で魅惑的なゲーテの時代と生涯を、歴史と自然史の視点から多面体として描き上げる。文学を読むことを根源から問うゲーテ論。
目次
第1章 無限宇宙へ伸びる視線―ゲーテとは誰だったのか(『親和力』;幻想・時間・危機;“希望”の囁きと死の影;宇宙空間への脱出)
第2章 ゲーテ読解の視座の変遷―私的研究小史
第3章 文学研究方法私的序説あるいは山の登り方についておよび実例の試み(文学研究方法私的序説;実例 詩を読む試み)
補章 ゲーテ―その時代、生涯、作品
著者等紹介
柴田翔[シバタショウ]
1935年生まれ。作家、ドイツ文学研究者。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1964年に『されどわれらが日々―』で第51回芥川賞を受賞。以後も作家活動の傍ら、東京都立大学、東京大学文学部でゲーテを中心にドイツ文学を教える。1995年から10年間、共立女子大学文芸学部教授として、演習「詩を読む」などの授業を担当した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
40
翔亀の"翔"は、白状すると柴田翔から採っている。「されどわれらが日々」は(内容は忘れたけど)我が学生時代のバイブルだったのだ。その柴田翔がゲーテ研究者だったことは知らずにいた(訳していたことは知っていたが作家の余技だと思い込んでいた)。修士論文以来彼の文学研究はゲーテとともにあった。「ゲーテの視線の届いている時空の広さが次第にそれを読む私自身の視界もを拡げていった」。それを「与えてくれたのはゲーテだけだった」(p18)。■本書には、東大退官時の学生向けの最終授業と学者向けの退官談話も収められている。↓2020/09/20