内容説明
優れたプルースト研究者として、かつ名文章家として知られる仏文学者が、永年読み親しんできた『エセー』と人間モンテーニュの尽きせぬ魅力を、戦乱の激動の時代を背景にドラマティックに語り、生と死をめぐる思考の極北へと読む者を誘なう深い思索の書。
目次
第1部 乱世に棲む(怒りについて―人食い人種は野蛮か;宗教戦争の渦中で;道草―新しい橋ポン=ヌフ余聞;宗教戦争の批判―あるいは文明と野蛮)
第2部 モンテーニュはどう生きたか(ある転機について―「レーモン・スボンの弁護」をめぐって;世界、この私を映す鏡;変化の相のもとに;果樹園にて―日々が静かであるために)
著者等紹介
保苅瑞穂[ホカリミズホ]
1937年、東京に生まれる。東京大学文学部仏文科卒業、同大学院人文科学研究科仏語仏文学専攻博士課程中退。東京大学大学院総合文化研究科教授を経て現在、独協大学外国語学部教授
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感想・レビュー
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KAZOO
137
モンテーニュのエセーを読む人にとっては少し難しいのかもしれませんが、その内容あるいはエッセンスを示してくれる非常にいい本だと思います。エセーは私はさまざまな本で読んでいるのですが、この本と、堀田善衛さんの本はこのエセーが書かれた状況などがよく理解できます。エセーを手に取って読んだ後に再度この本を読むと理解が深まる気がします。2017/01/01
湿原
9
『エセー』の解説書である。内容は少々難しいが、宗教戦争の背景とモンテーニュの思想の推移を伝えている。この書籍を書くのに著者の保苅先生は10年を費やしたとのこと。『エセー』の奥深さが、あとがきの言葉だけでもわかる。私は『エセー』については、一読しただけなので、モンテーニュの思想についてはまだまだ理解が及ばない。このような解説書があるお陰で、表面的ではあるが、理解ができた気はする。しかし『エセー』は必ず再読したい本であることは確信できた。2023/10/31
うた
6
モンテーニュの『エセー』は彼自身の言葉で書かれたということが、はっきりとわかる力強さ、素朴さ、誠実さが読みとれ、なんとも楽しい。では彼について書かれた本書はというと、これもまたいい。『エセー』をはじめとしてプルーストやパスカル等の文を引用して、『エセー』に近いを構成をもたせ、モンテーニュが生きた時代、思索の跡をたどり、彼の生き方について考えをめぐらしていく。個人主義や快楽主義といったくくり方をせず、一歩一歩丁寧に話をすすめていくところに保苅氏のモンテーニュへの親愛を感じます。2011/12/17
koji
5
文学的香気が漂うすばらしい1冊です。百万の言葉を費やし褒めるような「安っぽい文学・人生論」ではありません。全ては筆者が筆をおく前の終わりの1文に凝縮されます。「『エセー』を書くかれ(モンテーニュ)の精神の活動も、果樹園を歩くかれの肉体の享受も、そのなかで始まり、そのなかで深まる。」モンテーニュは人を空しい存在としながら、生々流転、日常の微かな変化をもって、「よく生き、よく死ぬ」ことができるとしました。本書で2015年読書おさめとします。読友の皆さま、今年1年ありがとうございました。良い年をお迎えください。2015/12/31




