内容説明
ラスキンの翻訳から作家プルーストが誕生した。三重構造によって『失われた時を求めて』創作の秘密をさぐる。プルースト全集未収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
39
プルーストが翻訳したラスキンの『胡麻と百合』を訳したもの。 プルーストの序文「読書について」と、読書論である「胡麻」、婦人教育論である「百合」を収録している。 なにせ、プルーストの訳文は、本文を超えるほどの分量の訳注が付されたものなので、訳者の苦労は並大抵のものではなかっただろう。 それにもかかわらず、右ページにラスキンの訳文を、左ページにプルーストの注とラスキンの原注を配し、更に訳者による注も付されているので、かなり読みづらいものとなっている。/2022/02/15
kinka
10
お堅い本だと思って覚悟して読んでたのに、面白すぎて困った。ヴィクトリア朝を代表する美術批評家にして社会改革論者、ラスキンの講演原稿を、フランスの小説家、プルーストが翻訳し、独断と偏見に満ちた注釈を付けた本。何が面白いって、2人の噛み合わなさっぷりが酷くて。これ偏に両者の性質が違いすぎるからだ。教養や美を道徳的高貴さと同一視し、社会改革に役立てようとするラスキンと、知性も美もあくまで個人の内的な活動の賜物であって、創造活動の手段と考えるプルースト。私はプルースト寄りだなあ、ラスキンはちょいウザい、かな。2016/03/15
きゅー
7
ラスキンが行なった二回の講演を文章化したのが『胡麻と百合』。その後、ラスキンに一時期傾倒していたプルーストが英語から仏語に翻訳を行い、数十ページにわたる序文、大量の訳注をつけた。それをさらに日本語訳したものが本書。プルーストが書いた序文は、のちの『失われた時を求めて』の萌芽が見え隠れしていて面白い。第1篇に書かれている<わたし>の幼少時の場面が、そっくりそのまま思い起こされる。本編の『胡麻と百合』を端的に言えば教育論となっている。読書による教育に主眼が置かれているが、あまり現代的な示唆は少ないと思われた。2012/02/19
もー子
1
𠮷田先生訳のプルーストがラスキン愛で訳して注釈いれた本(ですよね?これ)。当時の知識人向けに語られているのでちょっと時代がずれてる感じはするけれど、読書の本質は語っているかと思います。ほんと、読書は開けゴマ、です。2021/07/11