出版社内容情報
現代米文学の鬼才による、レイアウトまで斬新な長篇小説。突然ロス中心部に現れた巨大湖と母子の物語を中心に破壊的な想像力が炸裂。
内容説明
突然ロサンジェルスの中心部に現われた巨大な湖。息子を救うために湖底へと潜っていく主人公クリスティンの物語と、2017年西海岸のゲリラ隊の物語が絡み合う。原書の実験的なレイアウトを邦訳版でも再現。北米のマジックリアリスト、エリクソンのカオス的な想像力が炸裂。
著者等紹介
エリクソン,スティーヴ[エリクソン,スティーヴ][Erickson,Steve]
1950年カリフォルニア州生まれの小説家。マジックリアリズムとSFと純文学の境界域を越境する作家として知られる。1985年『彷徨う日々』でデビュー。ジャーナリストや批評家としても活躍
越川芳明[コシカワヨシアキ]
1952年千葉県生まれ。明治大学文学部教授(米文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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志ん魚
16
『アムニジアスコープ』あたりで、ダイナミックさが鳴りを潜め、私的感傷世界へ沈降しだした感のあるエリクソンだが、本作ではそれが極まった感じ。もはや小説とうよりも「ビジョン」の塊。ある意味著者のエッセンスが凝縮された「生搾り」的な作品だけに、楽しむには相応の「エリクソン愛」が必要かも。まあ、読者に愛を要求するってのがエリクソンらしいのだけど(笑)。あ、でも、波打ち、錯綜する不思議な文字レイアウトは、心象世界の覚束なさとパラレルワールドの構造を表現するのに超効果的だったと思う。一見の価値ありです。2012/10/12
saeta
10
たまたま続けて読んだから良かったが、これの前に読んだ「真夜中に海がやってきた」の続編だったようだ。しおりの紐が2本付いてる珍しい作品だったが、中盤ぐらいから前作を読んでいない人への配慮・おさらい的な1行がエンディングまで被さる不思議なレイアウトだ。エリクソンの小説は過去作に出て来たシーン・イメージがリフレインされるのも面白い。今作では「Xのアーチ」だったか?列車の終着駅の無人のホテル辺りも出て来た。珍しく最後がハリウッド映画的なヒューマンなエンディングだ!2018/05/10
すけきよ
9
過去も未来もすでに存在しており、時空を縦に貫くことによって、それらを垣間見ることが出来る。それが文章だけでなく、レイアウトでも実際に表現されていて、これが効果的であると同時に、かなり読むのに時間がかかる。空間を貫く時間、時間を無視する空間、この二軸の中に分布している人々の顔が増えて行くにつれて、超越的な物語は普遍的となり、愛情や喪失を共有していくことになる。まぁ、正直、よく飲み込めてないんで、他とは違う読書体験は自分で確かめて欲しい。ただ、『真夜中に海がやってきた』と続いているので、未読の方はそちらから。2009/11/16
河内 タッキー
7
相変わらず、終始繰り返される幻想。うなされるような感覚が続く。それだけに最後は長い(実際小説中の年月は恐ろしく長い)悪夢から目覚めたような安堵感。これを味わうために読んできたのか?2024/06/02
hagen
7
前作の続編になるらしいが残念ながら殆ど記憶に無い。超自然災害又は戦争破壊がもたらす殺伐として荒涼とした世界観。カオスとしての象徴の湖は突如として出現するが、主人公の女が産み落とした息子の影を探し求める内面の旅を機軸にして何重にも重なる時と場所を隔てた間隙の中で荒涼とした物語が語られる。曖昧な時間軸と共に決して目的地に辿り着かない列車。読む者にひたすら動揺を与えるのは描かれる人々が常に虐げられる悲壮感に裏付けされているとの同時に、各頁の活字が勝手に段組の法則を逸脱し始め思考を混ぜ返すのに原因があるのだろう。2020/05/23