内容説明
短篇の名手として名高い米女性作家が描く、暴力と殺人とユーモアと恩寵と。個人全訳で贈る初の全短篇集。
著者等紹介
オコナー,フラナリー[オコナー,フラナリー][O’Conner,Flannery]
1925‐1964。アメリカ南部ジョージア州で育つ。短篇の名手として知られ、O・ヘンリー賞を四回受賞
横山貞子[ヨコヤマサダコ]
1931年生まれ。京都精華大学名誉教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イボンヌ
8
時々短編を読んで想像力を鍛錬する必要がありそうです。2019/02/10
ハルバル
7
突然「啓示」が読みたくなったが、上巻には入っていなかった。そのかわり「善人はなかなかいない」が冒頭にあり、かなり衝撃的。昔の南部を体現したような老婆とその一家が通り魔的に虐殺される。そこに意味や理由がないことにゾッとする。オコナーの追及する救済や恩寵を作品から読み取るのは難しく、ましてキリスト教に通じていない人間には単に暴力的な作品としか写らないと思う。フォークナー書く暴力同様、そこには南部という土地の持つ深い精神性が宿っているようだ。2018/01/10
まおまお
3
オコナーは自身の病気と南部の保守的風土、黒人奴隷制と宗派の狭間の緊張感の中で生活してきた小説家のせいか眼差しが地を這うようで、人間の醜さを鋭く描き出している。誰もがそれぞれに抱え生きている醜さは灯台もと暗しのごとき見えずにいるだけで、暗がりには揺るぎなく存在している。自分自身がひねくれずにそれを見つめることで逆に生きやすくなるのが文学の効用なのだとおもったりする。2021/11/17
7kichi
3
緊迫感を感じる作品がズラリ。なかでも「善人はなかなかいない」と「田舎の善人」は一読の価値あり。2016/04/13
Takuo Iwamaru
3
収録されている短編の大半というかほとんど全部というかもう全部がハッピーエンドとは無縁です。しかし同時に思います。とんでもなく不幸な終わり方をする短編ですら、じめっとした悲しみとはまたどこか違う読後感だったと。物凄く高いところから人間を見下ろしているような、下界の喜怒哀楽、幸不幸など全てどうでもよくて単に人間を写生しただけであるかのような透明感。残酷すぎて残酷であることにすぐには気づけない作品群。あるいはわかりやすい残酷の奥に静かな世界が広がるかのような作品群。ふと、向田邦子の見事な短編群を思い出しました。2014/01/21