内容説明
退屈であるはずの日常生活にひそむグロテスクさと、グロテスクなはずの非現実の退屈さがせめぎ合う、〈現実〉という血まみれの部屋―。夫婦間の秘密、葛藤、すれちがいをさらけだす、アトウッドの短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
66
男性だけではなく、人に求められる「姿」と個人を映し出した「ルゥルゥ」。可愛らしい名前に対し、魁偉な容貌を持つルウルゥが悟る妥協点に身に覚えのある人はいるだろう。「青ひげ」をベースに優しいが愚鈍だと侮っていた夫の一面を見てしまう表題作。自分が自覚していた魅力がそれ程でもなかった事実に愕然とし、嫉妬と焦燥を覚える様が痛いほど、抉り出されているので目を背けたくても背けられない静寂に襲われる。「罪食い人」はジェンダーステレオタイプを指摘しつつも、夫に死後も縛られる女性像の暗喩に幻想的な描写も相俟ってゾッとする。2017/02/18
belier
2
アトウッドの短編ははじめてだが期待は裏切らない。この人の作品には、別にこれ見よがしにしているわけではないのに、作者の強い芯の通った自我を感じてしまう。平凡な日常と異世界とをあいまいに漂うような短編たちでもまたしかり。2013/10/04
くさてる
2
落ち着かないざわめきがいつまでも心に残る短編集。描かれているのは(ちょっとエキセントリックではあっても)ごく普通の人々の日常生活なはずなのに、何かが少しずれている。こちらをまっすぐ見つめている瞳が、いつのまにか少しずつ揺れ始めるのを見たような気になる。どうとでも解釈できる内容かもしれないけれど、この一作とはまず選べない。どれもが不可思議で、平凡で、歪んで、美しい。2012/01/21
よしあ
1
今ひとつ入り込めなかった。強いて言うなら、芸術家のエキセントリックさ? 芸術家に限らず人の思考は外からは解からないよね、ということかな。2023/01/16
Ra
1
やはり女ならでは。「罪食い人」が特に印象的。2019/01/14
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