内容説明
メアリアンはゆっくりと人々から切り離され、孤立してきた。隅っこに追い詰められて、今はそこに座りこんでいる。手に膝をのせて。ほかに道はない。ほかに行くところはない。ディックの青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
催涙雨
53
ディックの普通小説、というかいちおう恋愛小説。没後の発表だが執筆時期は偶然世界と前後するくらいでかなり早いらしい。普通小説としてはかなり無難に仕上がっていて特に序盤においては特筆すべき特徴をもたず、またディックの著作を読んでいる感じもあまりない。その片鱗を覗かせるのは終盤に向かうシナリオとそのテーマ、メアリの人物造形や彼女を取り巻く環境等、主にメアリに付随したものにほぼ限定されるように思う。この作品を書いた当時のディックはまだ20代だったそうで、ティーンエイジャーを囲っていた時期とは話が違ってくるのだが当2020/10/05
Vakira
12
発売当時初版で購入。久々に読んだディックが面白かったので、確か買ったはずと思い押入れを探して見つけ出し早速読んだ。SF作品ではなかったですね。題名のイメージから少女と怪物のメルヘンストーリーの印象でしたが、普通の小説で新鮮に読めました。ディックはいろんな評で女性を描くのは下手だと言われてますが、この物語は下手だと思えません。主人公はメアリという閉鎖された田舎の生活から打開すべくもがいている少女と若い女性にひかれながら翻弄される50代の男の話。2014/07/21
スターライト
7
ディックが書いた普通小説。タイトルから『ニックとグリマング』風の、メアリという少女と文字通りの巨人の童話かと思ったが、違った。ヒロインで二十歳のメアリアンは、デイヴというフィアンセがいるにも関わらず、町へやってきてレコード店を開店したジョセフや黒人歌手のカールトンらと次々に親密になっては相手を翻弄する。仕事も次々と変え、両親との仲も良くなく不安定。少女が大人になっていく成長小説とも読める、ディックにしては珍しい作品。それにしても、リアルと言えば聞こえがいいが、いやな女性ばかり彼の作品には出てくるなあ(笑)2012/07/01
ヴィオラ
5
ディックの「普通」小説の中では、これが一番好きかも。解説にあるように、シリング(巨人)の設定の方がディック自身の経歴に近いのかもしれないけれど、実際読んでると、メアリアン(メアリ)の口を借りてディックが色々叫んでいるような気がしてしまう。例えば306頁とか、「メアリアン」を「ディック」と置き換えて読んでみたり…うがち過ぎ?2011/05/09
Yoshiyuki Kobuna
2
乾ききっているような、逆にしっとりもしているような表現し難いディックの普通小説。メアリアンの、現実をなんとか打破しようとする生き様は痛切ではあるが、自分が共感できるのは年齢も近くなってきた「巨人」達だったりする。2015/03/15