内容説明
純白の処女の喉元に飾られた血の色の首飾り。さしこむ月光の中、下肢から血をしたたらせる狼少女…。赤頭巾、白雪姫、青ひげ、吸血鬼譚などに着想を得て、性のめざめと存在の変容とを描く、セクシュアルで残酷な短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あたびー
40
#日本怪奇幻想読者クラブ 「伝統的な物語からその潜在的内容を引き出して、それを新しい物語の出発点として利用する」短編集。作者が「この本のアメリカ版に不愉快にも書いてあるように、『大人向けの』童話を作ることでもなく―」と言っているのにもかかわらず(そしてそれが巻末訳者あとがきに書いてあるにもかかわらず)「大人のための幻想童話」とサブタイトルをつける出版社の認識ってどうなのだろうと思う。この本が1992年に出てから作者の本は沢山訳出されているようなので、ほかの本も読んでみたい。2021/09/30
ふるい
11
幻想的で、耽美で硬質な世界をとことん堪能した。民話や童話を換骨奪胎したストーリーだが、伝統的な役割に縛られた男女に著者が与えた結末は解放的なものだ。異形のものの描写が特にすばらしい。「血染めの部屋」「長靴をはいた猫」「妖精の王」「愛の館の貴婦人」が良い。 2020/03/12
rinakko
2
再読。2020/02/14
Нелли(ネリ)
1
童話の主人公たちが自らの女性性に誇りをもつ生ある人間として浮かび上がる短篇集。匂いも手触りも確かに感じるのに夢を見ている気分にさせられる中毒性がすごい2017/11/22
madhatter
1
一時期流行した俗悪なものとは一線を画する、童話パロディ短編集。本書は「女性の視点」という文脈で論じられることが多いらしい。だが、カーターの提示するそれは、必ずしもプラスに評価されるばかりのものではないように、私には思われた。収録作に血や性、死の匂いが漂っているように、女性の衝動を悪意や欲望、無気力など、マイナスにも捉え得るところからも炙り出しているのが面白い。特に表題作、娘を支配する主体が、母→夫→母と動くだけで、結局娘は誰かの支配からは逃れられないとも読める。女性の支配欲と無気力、これが対比されて怖い。2010/02/17