内容説明
旧約聖書創世紀にあるヨセフの物語は、イスラエルの族長ヤコブの第11子ヨセフが、父の過度の寵愛を兄たちにねたまれて奴隷としてエジプトに売りとばされた話である。このヨセフ物語をトーマス・マンが51歳から丸々16年かけて長大な小説にしたのが『ヨセフとその兄弟』4部作である。今世紀最大の夢のロマン、全巻完結。
感想・レビュー
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はる
6
旧約聖書創世記24-50篇33~92ページ(日本聖書教会)。洪水を生き延びたノアの子孫アブラムの子イサクの息子ヤコブの苦難とイスラエルの祖としての死までを波乱豊かに物語る。ヤコブが最も愛したラケルの長子ヨセフは誨淫の罪で二度目の幽閉にあう。知略の豊かさが当代のファラオを助けエジプトを大国に導く人格者となる。マンはこの25篇を18年の年月をかけ1943年に1800ページ余り二段組の物語に完成させている。2021/02/28
hachi921
5
18年かけて書かれた超大作の最終巻。ファラオの奴隷となったヨセフが、多くの人々を「養う人」になるまでのお話。最終巻はゲーテからの影響か観念的な話が多い印象でした(冒頭から神学的内容だしね)。しかし、全体的に明るさと軽さを感じさせる作風で、ある意味でいつものマンらしく無くこれはこれで大変良かったです。凶作で救いを求めに来た兄弟たちに罪を告白させるよう家令と相談するところなんて実にコミカルですね。その後の「私がそれです」という大変名高い1節のシーンは清々しさを感じさせると共に静かな感動を呼び起こします。2020/01/08
DEN2RO
0
夢を解く力は神の計らいを察する力であり、彼個人の頭を高めることになり、エジプトのためにも大きな恵みとなります。二度目の穴=牢獄から出たヨセフはパロに次ぐ権力者となって民と国とを「養う人」となりますが、その望みは家族との和解でした。「第4部 養う人ヨセフ」2023/07/26