出版社内容情報
『俘虜記』、『武蔵野夫人』、完璧主義により描かれた鎮魂の書『レイテ戦記』、『堺港攘夷始末』など、小説家大岡昇平のながい旅の軌跡を、作品に沿って浮き彫りにする。
内容説明
戦後文学史に不滅の輝きを放つ小説群―卓抜な読解に浮び上がる、豊饒な作家の“全体像”。『俘虜記』により作家として出発、ベストセラーとなった『武蔵野夫人』『野火』『花影』、完璧主義による壮大なレクイエム『レイテ戦記』。さらに『事件』、『堺港攘夷始末』まで―歴史の激流の中で誠実な歩みをつづけた小説家大岡昇平の“ながい旅”の軌跡を、透徹した作品分析によって描き出す。
目次
小説家の生誕
俘虜の家の記録
情熱恋愛の心理とその彼方
深淵をさまよう敗兵
政治の地平に近づいて(崩壊の叙事詩;ハムレット変奏)
女たちをいとおしむ哀歌
レイテ島の闘い、および闘いを超えて
歴史が小説になるとき(先駆ける者の悲劇;空しい犠牲を悼んで)
愛と裁判について
著者等紹介
菅野昭正[カンノアキマサ]
1930年生まれ。フランス文学者、文芸評論家。東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パブロ
8
影響されやすい私は、この本を読んだだけで「大岡昇平って戦後最大の作家じゃん!」なんて。でも「最大」とは言わないまでも、「偉大」な作家なのは確かだろうな〜。簡潔で明晰、真実にとことんまで肉薄する文体。これが私の大岡昇平のイメージ。この本は大岡昇平がいかに文体を獲得し、精緻な構成を紡ぎだしたかを解明していく。さらにこの本が面白いのは、未完の小説を取り上げて、中絶せざる負えなかった理由までを解き明かしていること。あぁ、本を読むというのはここまで掘り下げないといけないんだ…私の読みの浅さといったら…ちょっと絶望。2015/05/12
T. Tokunaga
2
著者の感想は入るし典拠は曖昧だし、本格的評伝とはいいがたい本。2024/06/14