内容説明
漱石は処女作『吾輩は猫である』と第一短篇集『漾虚集』に収めた諸作で、その文学世界の端緒を発見すると同時に、国民的作家へ至る道筋の端緒をもつかんだ。この作品群を、一章一編ごとに分解し、執筆順に読みなおしてみれば何が見えてくるか。作家精神の脈動を、漱石自身の執筆に立ち会う如くに解明するスリリングな論考。
目次
1 漱石の登場(差異のなかの一致;漱石の登場)
2 『吾輩は猫である』と『漾虚集』と(『吾輩は猫である』と『漾虚集』と;短篇小説集『漾虚集』の意味;挿話の連鎖としての『吾輩は猫である』)
3 型、変奏、綾(坊っちゃんの受難;『草枕』について―「幻境」との往還;『虞美人草』の綾―「金時計」と「琴の音」)