出版社内容情報
これこそ戦争に投げ出されたときの、名も無い兵士のリアルだ。
世に知られることなく眠っていた、130枚の戦場体験スケッチ。
戦後80年――ふたつの戦場を生き抜いたひとりの日本兵の貴重な記録を今こそ世に問う。
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激戦の中国戦線、多くの餓死者を出した南方の島……
一人の庶民が体験した、陸軍一兵卒としての過酷な戦場体験が鮮烈な絵で描き残されていた。
戦後30年を過ぎてからの大病で生死をさまよったことをきっかけに生まれて初めて絵筆を取った砂本三郎。
本書は、発掘されたその130枚の絵に綿密な解説を収める。
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「いったいどのような思いで、これだけの分量の、それも戦争を背景とした絵を描いたのだろう。水彩絵の具をはしらせた一三〇枚のスケッチを目の当たりにしたとき、私はその素朴ながらも生々しい描写の数々に大きな衝撃を受けた。
決して達者ではなく、絵画というよりは、漫画チックでちょっとユーモラスですらある。遠近法も無視され、デッサンも安定してはいない。しかし、一枚一枚が切迫感をもちながら「何か」を問いかけてくるのだ。
ちょっとざらついたような、こちらに揺さぶりをかけてくる不安感にも似た「何か」。その実体が何なのかを自問自答するのだが、すぐに解答などはでてこなかった。」
(渡辺考「本書刊行について」より)
【目次】
内容説明
戦後80年、戦場の真実がいま明らかに。リアルを通り越した人間の叫びがある。