出版社内容情報
遊郭の名残りをとどめる大阪・飛田。社会のあらゆる矛盾を飲み込む貪欲で多面的な街に、なぜ人々は生きるのか? 長期取材をもとにした迫真のノンフィクション。
内容説明
遊廓の名残りをとどめる、大阪・飛田。社会のあらゆる矛盾をのみ込む貪欲で多面的なこの街に、人はなぜ引き寄せられるのか!取材拒否の街に挑んだ12年、衝撃のノンフィクション。
目次
第1章 飛田に行きましたか
第2章 飛田を歩く
第3章 飛田のはじまり
第4章 住めば天国、出たら地獄―戦後の飛田
第5章 飛田に生きる
第6章 飛田で働く人たち
著者等紹介
井上理津子[イノウエリツコ]
1955年生まれ。フリーライター。大阪を拠点に人物インタビューやルポを中心に活動を続けてきた。とくに、生活者の視点を踏まえた文章が多い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
124
現存する大阪の遊郭、飛田新地のレポートです。街そのものが特殊な業態の集まりであるがゆえ、撮影厳禁、取材拒お断りとなるようです。著者が12年通い続け、ついに書き上げた渾身の一冊というのがアピールポイント。確かに取材は難しいのだろうけれど、取材方法については疑問符が付きます。どこか興味本位というか、真摯さに欠けるように思えるのです。結局、本書は何を言いたかったのか。街の魅力、ここに暮らす人々の生き様、フェミニズム、悲しい男の性・・・遊郭としての歴史は興味深く読めました。資料をまとめただけかもしれませんが。2020/05/27
おいしゃん
98
日本に最後の色街として残る、飛田。自分も含め、「どんな街か聞いたことはあるが、詳しくはわからない」そういう人は多いだろう。著者も取材中、数え切れないほど、「この街にさわらんといて」と拒否され続ける。そんな中、この街とこの街に働く人々の背景を丹念に観察しただけあって、とても読み応えがあった。先日天王寺のあべのハルカスへ観光したが、そのお隣がこんな世界が広がっていたとは…日本は本当に奥深い。2015/07/15
海猫
93
思い切った体当たり的取材をしているのは感心するのだが12年かけたというわりに内容の厚みを感じないルポタージュ。ある程度土地柄や空気を知っているので驚きが少ないのもあると思うが本としてのまとめ方が雑だし文章が引き締まっていないので求心力がない。ところどころ取材した人物に対して著者の蔑視が垣間見えるのはどうかと思う。男性の場合だと露骨に見下しているのは不快ですらある。2013/10/04
kinkin
89
飛田・・・読む前はその詳細が明らかになる、と信じて読み続けた。あとがきで著者は単なる物見でこの土地にいかないで欲しいと書いている。なにやら結果的には著者自身がここで暮らす人たちに同情的納得という形でペンを置いたのではあるまいか。飛田という土地柄についてはぼんやりながらも見えたと思う。ただそこにやって来た客、体を張って働くリアルな女性たちとストレートで丁々発止のやり取りもあってもよかったのではないか。飛田という街のガードの固さを打ち砕けなかった感もあった。対象はまだまだ崩れることはない、強者だ。2014/12/15
ケイ
85
もう一つまとまりのないルポルタージュ。作者本人がこれを書くにあたって、腰を据えて書いたという気概が伝わってこないからだろうか。新入社員歓迎会で先輩がふざけて動物園前のお店に連れて行かれ、店の前を通った時に、襦袢を前をはだけて着たお姉さんと店番のおばあさんがいて、驚愕したのを鮮明に覚えている。「娼婦の作りし哀歌」に胸がつまる。三階にある「開かずの間」の苦しさ、恐ろしさ。昭和の時代と今では働く女性たちの想いも身の上も随分と違うようだ。2014/05/04