出版社内容情報
アラフォーの柳田譲の前に現れた三人の女との出会いと別れ。愛を求め、また与えようとして却って孤独へと突き進んでしまう魂の悲哀を描く太宰治賞受賞後第一作!
内容説明
闇雲な愛が孤独を暴走させ、人生の迷路が深まっていく。『自分以外全員他人』に続く太宰治賞受賞第一作!!なぜこんなことになってしまったのか。アラフォー男性の人生の分岐点。
著者等紹介
西村亨[ニシムラリョウ]
1977年鹿児島県生まれ。鹿児島県立鹿児島水産高等学校卒業。2023年、「自分以外全員他人」で第39回太宰治賞受賞。同年、南日本文化賞奨励賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キク
54
題名は「地獄への道は善意で敷き詰められている」のパロディだろうけど、コワイですね。外見はいいけど社会とうまく向き合えない中年男性が主人公。こういう男は確かにいる。綺麗な女性は、同性からのやっかみや異性からの攻撃的な好意にさらされることが多く、立ち振る舞いが洗練されている方が多い気がする。でもルックスのいい男性は同性からは可愛がられ、異性からの好意は意に介さず、ボンヤリと生きているタイプが本当にいる。個人的にはホストみたいな奴より、これくらい生きづらそうにしているイケメンの方が好きだ。本人は大変だろうけど。2024/11/03
竹園和明
35
読み初めは、マジメな顔でボケるようなパロディの作品なのかと思った。特に前半、とぼけたような一文一文が可笑しくてニヤニヤしながら読み進めたけれど、途中からどうやらそうではない事に気付く。主人公柳田は、他人の為にいつも自分が身を引くお人好し。この上ない交際相手の夕子からも身を引く。世の中にはこういう生きる事に不器用な人もきっといるのだろう。笑って誤魔化し刹那的日常を繰り返して来た自分が恥ずかしくなる。柳田を通して自らを切り付けるような鋭利な作風は、太宰治賞受賞作家らしい太宰的仕上がりだった。2024/10/22
kan
23
笑っていいのか、難しい顔をしなくちゃいけないのか、よくわからないままスルスル読めてしまい、休憩も挟まず一気読み。こじらせアラフォー男の、さまざまに問題や悩みを抱える女たちとのやり取りと人生の重なりがどうしようもなく現実的で情けなくて、厭世観全開の語りがめんどくさいのに癖になる。玉絵視点編が読んでみたいが、もっと救いがなさそうな気がする。2024/12/09
こまり
19
前作の『自分以外全員他人』は太宰治賞。これも読んでいると太宰治の影がチラつく。ここまで自虐的で厭世的な部分をさらけ出すのもすごい。読んでいてどんどん暗闇に落ちていくような感じだ。でも、人前では無意識に隠しているであろう人間の本質も見え隠れして否定しきれない所もある。誰にでも薦める本ではないけれどなかなか面白かった。2024/11/07
りょうけん
15
<私> 西村亨の作品は先に『自分以外全部他人』を読んだ。特にどうだったかは覚えていない。が 太宰治賞を獲ったと云うのだからこりゃジュンブンですわね。という具合に なぜか僕はここのところジュンブンを沢山読んでいるのであった。その一番の理由は今まで贔屓にしてきたエンタメ系作家達の多くが 老いてしまって執筆の速度が極端に遅くなったせいだと僕は思っている。西村亨は現在おそらく48歳。ざっと僕より20歳近く若い。これからはこういう若い作家の本をどしどし読んでゆかないと僕の趣味読書は先細るばかりなんだなぁ。 2025/02/09